最終年度は、一つ目の研究実績として、新型コロナ感染症のパンデミック対応において、議会、議会制定法である法律がどのような役割を果たすべきかについて、国内の統治構造全体に目を配りながら、日本とドイツの対応の相違点と類似点を探る論稿を公表した。その他、パンデミック対応との関係では、グローバルレベルのパンデミック対応の意義と限界について、これまで研究を進めてきた、国内レベル、グローバルレベル双方における、公権力の正統化論、その正統化の対象となる公権力の析出方法に関する研究をいわば各論的に展開する形で分析する報告も行った。 次に、近時の日本の国内裁判例における国際人権の取り扱いについて、21年度に国際人権法学会でゲスト報告した内容をブラッシュアップして公表した他、より一般の公衆に向けて、立憲主義の世界的な展開を示す入門書の編集を行い、自分自身も、グローバル化の中における国内統治構造と国際的法秩序との関係や、議会や法律を通じた、軍事面、情報面のコントロールという、国際的、あるいはグローバルな展開にも密接に関わる個別問題領域について概説する章目を執筆した。 以上が最終年度の研究成果の概要であるが、研究期間全体を通じては、国内レベルでの法律の留保論について、ドイツ、オーストリアといった母法国における展開を確認した他、グローバルレベルでの法律の留保論の変容、あるいは、そのよって立つ根本原理である、法治主義や法の支配、立憲主義といった概念の変容、代替的概念のありようについて検討を進め、実際に成果を公表することができた。 以上のような検討を踏まえて、グローバル時代における公法、あるいは、法の一般的構想に検討を広げることができ、これを踏まえて、各論的検討を実施する後継の研究課題へと発展させることができた。
|