研究課題/領域番号 |
17K13612
|
研究機関 | 関西大学 |
研究代表者 |
水谷 瑛嗣郎 関西大学, 社会学部, 准教授 (80783688)
|
研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2022-03-31
|
キーワード | フェイクニュース / 報道機関 / プラットフォーム / 思想の自由市場 / フィルターバブル / 民主主義 / 情報資本主義 / アルゴリズム |
研究実績の概要 |
本年度は以下の二つの論稿を刊行することができた。 ①フェイクニュースと立法政策―コンテンツ規制以外の道を模索する― 本稿は、以前に執筆した論稿「思想の自由市場の中の『フェイクニュース』」の続編にあたるものである。本稿では、まず「思想の自由市場」論について概観したうえで、フェイクニュースをめぐる問題が情報技術の発展と無縁でないことを論証する。そのうえで、フェイクニュースの流通により引き起こされると考えられる「危害」について人権とデモクラシーの観点から整理し、政府の関与について具体的な検討を行っている。特に政府によるコンテンツ(内容)規制は、問題解決以上に事態を悪化させる可能性があるため、選挙運動に焦点を当てた規制、既存の報道機関への助成、プライバシー保護といった手法について検討を深めた。
②思想の自由「市場」と国家 : 表現の自由の「環境」構築を考える 本稿は、これまでの研究でたびたび触れてきた「思想の自由市場」論が、現在直面している状況を炙り出すことを目的としたものである。まず「思想の自由市場」論の「含意」としての「競争」に加えて、熟議的な「対話」という要素を抽出した。そのうえで、アメリカの「修正一条ロックナー主義」的傾向をとりあげ、これと昨今の情報資本主義とオンライン・プラットフォームの台頭を併せて検討し、その問題点を論じている。その際、当のアメリカでも「ロックナー主義」的傾向を見直そうという動きがあることにも触れている。そして、そこから今後の表現の自由論には表現環境全体を見据えたシステマティックな視点が必要となり、政府の一定の関与が必要となることを示唆している。最後に政府介入のあり方について「透明性」を例にとりあげつつ、検討を深めた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
期間の延長を行ったため最終年度であった2020年度であるが、期せずして新型コロナの到来と、そのコロナ禍によって生じた学内業務等への対応に追われ、十分な研究活動の時間を確保することができなかった。そのため、再度、研究計画を変更し、来年度(2021年度)への期間延長の再申請を行った。
|
今後の研究の推進方策 |
2021年度は、本来ならば2020年度に行う予定であった本研究の締めくくりとなる論稿を執筆する予定である。
|
次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルスの蔓延により、研究に必要な出張などが軒並み中止となり、想定以上に旅費などの支出がなかったため。
|