研究課題/領域番号 |
17K13614
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研究機関 | 帝京大学 |
研究代表者 |
杉山 有沙 帝京大学, 法学部, 助教 (00705642)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 日本国憲法 / 憲法14条 / 差別禁止 / 障害差別 / 平等保障 / イギリス / 平等法 / 関係者差別 |
研究実績の概要 |
本研究課題を進めるために具体的に2019度に行った研究内容は、①本研究課題の成果としての単行本の書籍化、②新たな差別類型の日本国憲法への応用、③発展的研究を行った。 まず、①の研究について、『日本国憲法と合理的配慮法理』(成文堂)を刊行した。これにより、本研究課題が体系化された。具体的には、①弱者ではない「個人」を基準にした偏頗的な社会構造の被害者としての日本国憲法における「弱者」の存在を明らかにし、②当該弱者の本来の能力・条件の発揮または本来得られたはずの権利利益の享受の適切な保障を担う平等権保障としての「合理的配慮」の法的な規範構造を明らかにし、③この合理的配慮法理の日本国憲法論への具体的なレベルでの応用可能性を研究し提示した。 ②の研究について、「日本国憲法14条における『関係者差別』解釈の可能性――ハンセン病家族訴訟を契機にして――」『帝京法学』33巻2号(2020年6月刊行予定)で公表した。本稿では、ハンセン病家族訴訟を素材にして、欧米では広く認識されている関係者差別(associative discrimination)を顕在化した。 ③について、「障害法から見た『個人の自律』を強調して生存権保障を統制する意義」『帝京法学』33巻1号115-154頁(2019年10月)を公表した。英国では、障害法の観点から見れば、差別禁止法理と社会保障法制度の保障のあり方をめぐった思想である自立生活(independent living)は密接な関係にある。本研究課題をさらに展開させる理論として、当該内容を研究し、公表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
単行本を書籍化したものの、イギリス障害差別禁止法理から導き出される平等保障を十分に日本国憲法に応用できたとはいえない。さらに、細かく研究していく必要がある。
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今後の研究の推進方策 |
単行本を書籍化したものの、イギリス障害差別禁止法理から導き出すことができる平等保障のあり方は、まだまだ存在する。単行本は、特に合理的配慮法理に注目し、同法理を日本国憲法に応用したに過ぎない。今後は、単行本では書き切れなかった差別禁止法理を、日本国憲法論へと応用させる予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度では、主に、研究のための図書(和書、洋書を含む)を中心に購入していきたい。また、現段階で特に予定はないが、必要が生じたら、研究を進めるための物品(PC等)の購入も行いたい。
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