研究課題/領域番号 |
17K13616
|
研究機関 | 静岡大学 |
研究代表者 |
川岸 伸 静岡大学, 人文社会科学部, 准教授 (30612379)
|
研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
|
キーワード | ジュネーヴ諸条約共通第三条 / ジュネーヴ諸条約第二追加議定書 / 慣習国際人道法 / 武力紛争法の人道化 / ICTY |
研究実績の概要 |
2019年度は、第1に2018年度までの研究実績を外国の学会・大学において発表すること、第2に旧ユーゴスラビア国際刑事裁判所(ICTY)における慣習国際人道法の認定方法を解明することを目標とした。第1の点に関しては、2018年度までの研究実績を外国の学会・大学において発表する機会を得た。Association of Human Rights Institutesの年次大会がドイツのポツダム大学において開催され、科研代表者は歴史的展開を扱うセッションにおいてジュネーヴ諸条約共通第三条の成立過程に関する分析結果を英語を用いて発表した。さらに、スペインのアルカラ大学において国際人権法に特化した大学院プログラムに招聘講師として招かれ、非国際的武力紛争を規律する武力紛争法の史的展開のうち、特にジュネーヴ諸条約第二追加議定書の成立過程に焦点を当てて分析結果を英語を用いて発表した。いずれの英語発表に対しても、参加者から様々な意見をもらうことができ、自身の主張を見直す良い機会となった。なお、後者の発表は「非国際的武力紛争への敵対行為規則導入の史的検証――ジュネーヴ諸条約第二追加議定書をめぐって――」と題して論文を公表することとなっている。第2の点に関しては、ICTYにおける慣習国際人道法の認定方法を対象とする論文を執筆した。この論文の公表は2020年度内に予定されている。ICTYにおける慣習国際人道法の認定方法は、国家慣行よりも法的信念を重視すること、帰納的論証よりも演繹的論証を用いること、国家の現実の行動よりも国家の声明を証拠とすることにそれぞれ特徴があることが分かった。これらの特徴は、慣習国際法の認定方法の諸アプローチの中でも、「伝統的アプローチ」ではなく、むしろ「現代的アプローチ」を反映するものであると言える。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本科研の柱としては、ジュネーヴ諸条約共通第三条の成立過程、ジュネーヴ諸条約第二追加議定書の成立過程、さらに1990年代中葉以降のICTYにおける慣習国際人道法の認定を挙げることができる。ジュネーヴ諸条約共通第三条の成立過程についてはすでに分析を終え、論文公表を終えている。一方で、ジュネーヴ諸条約第二追加議定書の成立過程とICTYにおける慣習国際人道法の認定については、実際の論文公表は2020年度に持ち越しとなってはいるものの、いずれのテーマについても、一定の分析と素描的な執筆は終えており、ひとまずは当初の予定通りの進捗状況であると考えられる。
|
今後の研究の推進方策 |
ジュネーヴ諸条約第二追加議定書の成立過程に関しては、「非国際的武力紛争への敵対行為規則導入の史的検証――ジュネーヴ諸条約第二追加議定書をめぐって――」と題する論文を公表する予定である(分割掲載のうち、第1の部分はすでに公表を終えている)。その上で、ICTYにおける慣習国際人道法の認定に関しては、「非国際的武力紛争と武力紛争法の人道化――ICTYの判決をめぐって――」(仮題)と題する論文を公表する予定である。ジュネーヴ諸条約共通第三条の成立過程の分析結果とこれらの論文の分析結果を併せて、本科研の検討結果を総括することにしたい。
|
次年度使用額が生じた理由 |
ジュネーヴ諸条約第二追加議定書の成立過程に関する資料および文献、ICTYにおける慣習国際人道法の認定に関する資料および文献を収集する必要性が生じたことが理由である。これらの2点について、順次、資料および文献の取り寄せと購入を検討する。
|