研究課題/領域番号 |
17K13617
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研究機関 | 愛知県立大学 |
研究代表者 |
山下 朋子 愛知県立大学, 外国語学部, 講師 (20781397)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 国際法 / 外交的保護 / 国際投資条約仲裁 / 国内的救済完了 / 慣習国際法 / 国際人権 / Denizenship / 非国家主体 |
研究実績の概要 |
本研究では、国際法の大前提たる合意原則がどこまで貫徹されるべきであるのかという問題について、主として20世紀前半までに国家間法として形成された慣習国際法における諸規則が、現代グローバル法秩序においてどのように適用されるのかという観点から検討を行っている。平成29年度は、法形成過程に関与していない非国家主体へ国際法はそのまま適用されるのか、あるいは修正が必要となるのかという、国際法主体に関する問題に取り組み、ヘルシンキ大学や京都大学などの国内外のセミナー、学会等に積極的に参加し、知見を深めた。 研究成果としては、第一に、博士論文のテーマであった外交的保護との関係で、従来は外交的保護の発動要件として国籍が絶対的に必要であるとされてきたところ、実際の居住を主とした人権保護の概念から提唱されるdenizenshipが、国籍に変わる概念として、外交的保護の発動要件となり得ることにつき、アイルランド国立大学ゴールウェイ校のEkaterina Yahyaoui Krivenko氏が編纂した Human Rights and Power in Times of Globalisation (Brill Nijhoff, 2018)にて公表した。 第二に、従来、国家間関係において形成された国内的救済完了原則という慣習国際法の原則が、投資家対国家にて争われる投資条約仲裁において、新たな国際法主体として登場した投資家の主張により、内容的な変化を受けているのかについて考察し、論考をまとめ、国際法学会の学会誌である国際法外交雑誌117巻1号にて公表予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
構想段階にあった論考を1本公表し、あと1本も近日中に公表される予定である。
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今後の研究の推進方策 |
平成30年度は、これまで取り組んできた外交的保護という国家間での実行により形成された慣習国際法上の規則が国際投資条約仲裁で参照される際、私人への適用という訴訟当事者の性質の違いがあるにも拘わらず、そのまま適用されるのか、それとも何らかの修正が加えられるのかという問題につき、検討を継続させながらも、他の論点にも取り組む。具体的には、慣習法が条約化され、あるいは条約が慣習法化することにより形成された現代グローバル法秩序において、慣習法の果たす役割はいかなるものであるのかという問題について、例えば、投資条約仲裁と貿易法の関係などにも広めながら検討を進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成29年度は科研費以外にも、民間の研究助成を得ることができたため、本研究に対するエフォートが少なくなり、当初の計画よりも使用額が少なくなった。しかしながら、本年度は研究助成は、本科研費のみであるので、全ての項目において、昨年度よりも使用額が増額することが見込まれる。
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