研究課題
本研究では、国際法の大前提たる合意原則がどこまで貫徹されるべきであるのかという問題について、主として20世紀前半までに国家間法として形成された慣習国際法における諸規則が、現代グローバル法秩序においてどのように適用されるのかという観点から検討を行っている。平成30年度も、法形成過程に関与していない非国家主体へ国際法はそのまま適用されるのか、あるいは修正が必要となるのかという、国際法主体に関する問題に取り組み、日本の国際法学会、ヨーロッパ国際法学会、京都大学の研究会などの国内外のセミナー、学会等に積極的に参加し、知見を深めた。また、国際法資料に関しては世界最高峰のコレクションを誇るオランダの平和宮図書館にて資料収集を行った。研究成果としては、第一に、従来、国家間関係において形成された国内的救済完了原則という慣習国際法の原則が、投資家対国家にて争われる投資条約仲裁において、新たな国際法主体として登場した投資家の主張により、内容的な変化を受けているのかについて考察し、論考をまとめ、国際法学会の学会誌である国際法外交雑誌117巻1号にて公表した。第二に、非国家主体が慣習国際法形成に与える影響についてマンチェスター大学のJean d’Aspremont教授らと共同研究で進めてきた成果について、現代のグローバルな国際法秩序において投資家が慣習国際法形成にどのような影響を及ぼしうるかについての論考を令和元年度中に公表する予定である。第三に、ハーグ国際法アカデミーのCentre for Studies and Researchにて、平成27年より進めてきた個人の国際正義(international justice)へのアクセスに関する共同研究の成果として、非司法的手続による紛争解決についての論考を令和元年度中に公表予定である。
2: おおむね順調に進展している
平成29年度、平成30年度を通じて、ほぼ計画通りに資料を収集し、論考を公表してきている。
令和元年度には、フィナンシャルレビュー(財務総合研究所)に内国民待遇原則に関する論考を、国際経済法学会年報に投資協定仲裁に関する書評を、坂元茂樹先生および薬師寺公夫先生の古稀記念論文集に外交的保護の国籍に関する規則についての論考を、それぞれ公表する予定で準備を進めている。
平成29年度に科研費以外に民間の研究助成を得たことで、本研究に対するエフォートが少なくなり、当初の計画よりも使用額が少なくなった。平成30年度は、当初の計画以上に本研究に取り組んだが、平成29年度からの繰越額全てを消化するには至らず、令和元年度に若干ながらの繰越額が発生するに至った。繰越額については、特別なことをせずとも計画に沿って着実に研究を進めれば、適正に執行することができると予想される。
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すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (2件)
M. Kamto ed., Access of Individuals to International Justice: the Hague Academy of International Law, Centre for Studies and Research 2015
巻: 印刷中 ページ: 印刷中
S. Droubi and J. d’Aspremont (eds), International Organizations, Non-State Actors, and the Formation of Customary International Law, Melland Schill Perspectives on International Law
国際法外交雑誌
巻: 117巻1号 ページ: 158-180