研究課題/領域番号 |
17K13619
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研究機関 | 横浜市立大学 |
研究代表者 |
瀬田 真 横浜市立大学, 国際総合科学部(八景キャンパス), 准教授 (90707548)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 海洋法 / 立憲主義 / 法の支配 |
研究実績の概要 |
国際立憲主義という概念は多義的であり、その意味するところは同概念を用いる人や機関によって異なるところも少なくない。ただ、現在では、国際立憲主義の力点として、(1)法の支配、(2)民主主義、(3)人権規範の強調、(4)規範の階層性の四つが一般的に挙げられるようになっている。本研究は、近年国際法の潮流として強まるこの国際立憲主義の観点から、海洋法を見直すものである。海洋法においては、17世紀より唱えられてきた「海洋の自由」が限界を迎え、現在では、「海洋の管理」の必要性が叫ばれるようになってきていることから、上述の国際立憲主義の四つの力点を軸として、この海洋の管理の現在ある姿、そしてあるべき姿を検討していく。このような研究を進めるにあたり、【課題A】として、立憲化の基礎となる国際立憲主義について研究する。上述した国際立憲主義の四つの力点が、具体的にいかなるものかについての分析を行う。次に、【課題B】として、国際海洋法の立憲化について四つの力点個々の観点から考察を行う。【課題A】と【課題B】との関係について言えば、原則として、前者が後者の基盤となる予定である。他方で、この【課題B】を通して得られた知見は、また逆に【課題A】の研究の深化につながることが期待される。そして、その研究はさらに【課題B】に反映することができると考えられる。この【課題A】と【課題B】との往還によって、国際立憲主義と、国際海洋法の立憲化の双方が豊かなものになっていくと考えられるのである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
国際立憲主義の研究を通じ、同概念においては、人権規範といった規範が強調されたり、規範の階層性が論じられることから、規範の性質が非常に重要となることが明らかとなった。しかしながらこの点、国際海洋法、特に、国連海洋法条約(以下、海洋法条約)においては、仲裁裁判所や国際海洋法裁判所など、海洋法条約第15部に規定される裁判所の判例を通じ、実体法(規範)と手続法(規範)の区分が不明確となる現象が起きている。換言すれば、二つの法規範が混在するようになっており、二つの法規範の峻別が厳密になされているとは言えない状態にあるのである。そのため、まずは、海洋法条約において、実体法と手続法があることを確認したうえで、それぞれがどのように規定され、また、どのように機能することが期待されているかについてまとめると同時に、現在発生している混在化現象について検討した。この点については、国内外の学会で報告すると同時に、その中で、”use of force”の概念に焦点をあてたものを、中国で開催されたシンポジウムで報告した。この報告内容は、シンポジウムでの報告の一部をまとめて出版される書籍の中に収められる予定である。
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今後の研究の推進方策 |
これまで行ってきた、上述の、海洋法条約上の規範についての分類の研究を進めると同時に、国際立憲主義にとって重要な要素の一つである、法の支配が、海洋法条約を通じていかに実現されているのか(あるいはされていないのか)、についての研究を合わせて行っていく予定である。特に、海洋法条約においては、現在、国家管轄権外の生物多様性についての新たな実施協定の締結作業が進行中ということもあり、新たな規範が発生したり、また、既存の規範が変遷する過程にあると言える。そこで、このような現象を法の支配からどのように評価すべきかについて検討する予定である。既に、神戸、オーストラリア、フランスと、国内外での報告が画定しているため、それらの報告と、その後のディスカッションなどを通じ、自身の研究を深めていく方針である。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究はおおむね順調に進んでいるため、基本的には当初予定していた形での支出となっている(6,494円と、総予算(直接経費)の割合としてはわずか1%過ぎない)。このような若干のずれが出たのは、校正費用が想定よりはかからなかったことなどが挙げられるが、これは2018年度で、逆に想定よりかかることもあり得るため、調整する予定である。
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