研究課題/領域番号 |
17K13620
|
研究機関 | 東洋大学 |
研究代表者 |
石塚 智佐 東洋大学, 法学部, 准教授 (30614705)
|
研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
|
キーワード | 国際司法裁判所 / 管轄権 / 判決の履行 / 先決的抗弁 / 国際刑事裁判所 |
研究実績の概要 |
本研究は、近年多様な紛争が国際司法裁判所(ICJ)に付託されていることに鑑みて、これら事件における管轄権基礎と請求内容の関係について研究することを目的とする。2 つの関係を検討することにより、国家はどこまで多様にICJ を利用することができるのか、それに対してICJ はコントロールすることが可能なのか、実証的研究を試みる。 本年度は、昨年度に引き続き、ICJには実効的な判決執行メカニズムを有さないという制度的な限界がある中で、ICJ判決の履行を実質的に求めて提訴する事件について研究を進めた。まずICJの判決の履行に関する仕組みを概観し、そのうえで判決の履行に争いのある事件に関して先行研究の分析を中心に検討し、判決履行の義務を達成したか否かの判断が非常に難しいことを確認した。そのうえで、以前の判決の履行に関して、新たな争訟事件又は解釈請求としてICJに再び付託した近年の事件を検討した。まだ今後のICJの動向を見ていかなければいけない部分が多々あるが、これまでの研究成果をまとめた論文を公表することができた。 また、並行して、同一紛争を扱う可能性のある国際刑事裁判所(ICC)との関係について、管轄権の基礎に着目した研究成果を公表した。ICJは国家間紛争を裁き、ICCは個人の国際犯罪を裁くということで裁判所の性格は異なるが、近年、ICJには国際武力紛争や国際刑事法の諸問題に関する事件が多く付託されているため、両者が同一の問題に関して法解釈を行う状況が容易に生じており、広い視野で見れば、諸国家側にとって自らが関係する国際刑事問題がどちらの裁判所で判断されるべきかという論点が考えうる。したがって、この論点を検討することにより、ICJがどこまで多様な紛争を扱うことができるのか、本研究課題に関してより多角的視野から分析を試みることができた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
昨年度から取り掛かっていた研究成果を公表することができたが、今年度は10カ月の休職期間があったため、当初の目的を十分に達成することはできなかった。
|
今後の研究の推進方策 |
当初の研究計画に従って、研究を進める。休職のため今年度に遂行できなかった課題に関しては、次年度に繰り下げて遂行するよう努める。
|
次年度使用額が生じた理由 |
休職期間があったため、次年度使用額が発生した。次年度も海外出張は難しいため、研究遂行に不可欠な書籍・物品購入を中心に使用する。たとえば、ICJ規程のコメンタリーの最新版(OUP、約6万円)等である。
|