研究課題/領域番号 |
17K13620
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研究機関 | 東洋大学 |
研究代表者 |
石塚 智佐 東洋大学, 法学部, 准教授 (30614705)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 国際司法裁判所 / 管轄権 / 受理可能性 / 原告適格 / ジェノサイド条約 / 裁判条項 / 当事国間対世的義務 / 民衆訴訟 |
研究実績の概要 |
今年度は本研究に密接に関係する裁判所の判断が下されたため、これら2件、すなわち2022年7月に先決的抗弁判決が下されたガンビア対ミャンマーの事件(2019年11月提訴)と2022年3月に暫定措置命令が下されたウクライナ対ロシアの事件(2022年2月提訴)を中心に検討を試みた。どちらも管轄権基礎としてジェノサイド条約の裁判条項を援用しており、ジェノサイド条約裁判条項の利便性が再認識される事態であった。さらに、2件とも、国際社会において非常に重要な事態(ミャンマーのロヒンギャ問題、ロシアのウクライナ侵攻)を対象としており、こうした事件でICJを利用する意義も問われることとなった。特に、ガンビア対ミャンマーの事件は、直接的な被害国ではないガンビアがミャンマーを提訴しており、ガンビアの原告適格が問われたが、裁判所はジェノサイド条約の性質に鑑み当事国間対世的義務を認め、本件の管轄権及び受理可能性を肯定した。本判決を受けて、他にどの多数国間条約が当事国間対世的義務に基づく提訴を許容しているのか、選択条項受諾宣言・裁判条約等に基づき対世的義務に関する原告適格は認められるか等の検討を行った。また、ウクライナ対ロシアの事件では暫定措置命令が下されただけであるが、その後、多くの国が訴訟参加をしており、またロシアが先決的抗弁を提出したことで、管轄権段階での訴訟参加の是非など様々な論点が浮上している。これらに関しては、一部社会発信を行った部分もあるが、次年度以降に成果を公表予定である。 また、昨年度から引き続き人権条約下での国家間裁判及び国家通報について研究を続けており、こちらに関しても次年度に公表する目途が立っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
今年度も数か月の研究中断期間があったため、当初の目的を十分に達成できたとはいえない。それでも、本研究に関わる最新のICJ判例を分析し、研究成果を一定程度公表することができたこと、また今後も成果を公表する目途が立っているという点で、一定程度の研究を進めることができたと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
研究開始当初は2019年度で研究期間が終了となる予定であったが、2018年度、2020年度及び今年度と研究中断期間があり、十分に研究計画を進めることができなかったため、2023年度も引き続き本研究を続けることとなった。次年度は最終年度ということで、基本的には研究計画書に従って研究を進めつつ、ICJの最新判例に目を配り、これまで積み重ねてきた研究の成果を積極的に国内外に公表することで、本研究の研究目的を遂行できるよう努めたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度も研究中断期間があったため、次年度使用額が生じた。2022年度までは社会情勢や個人的事情で難しかった国内出張や、研究遂行に不可欠な書籍・物品購入を中心に使用する予定である。
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