本研究は、子どもや教師の精神的自由の保障を目的として、特別の教科「道徳」における教師の教育の自由とその限界について考察するものである。今年度は、とりわけ教師と子どもの内面という観点から、教育実践的あるいは教育制度的に可能な提言をおこなうことを念頭に研究を進めた。 具体的には、スポーツ指導における教師と子どもの関係等を例に、ハラスメントが起こる原因をスポーツ心理学の専門家と共同して分析をおこない、内面的な負の影響力に原因があることなどを確認している(「スポーツ指導におけるハラスメント」(共著))。部活動等のスポーツ指導の場面にとどまらず、広く学校教育、とりわけ特別の教科「道徳」の指導場面にも応用可能な示唆を得ている。 その他の研究としては、外国籍の子どもの就学状況を対象として、多文化共生/多文化教育と子どもの内面等に関連する研究報告をおこなった。報告を通じて、外国籍の子どもをめぐる教育の条件整備を整えることの必要性に加え、子どもの精神的自由の保障、憲法的価値、教育における統合機能、寛容などの概念をいかに関係づけるべきかという課題を獲得できている(「外国籍の子どもと修学―権利・制度・運用―」沖縄法政研究所第72回研究会)。 研究期間全体について、比較法的観点からはドイツでの調査を通じて親の教育権や開かれた中立性概念の重要性、教師の教育の自由の観点からは中立性という概念が自由を制約するだけではなく制度化されることで教師の自由と子どもの学習権を保障する機能も有する可能性、そして教育行政と学校の関係という観点からは行政の広範な裁量を人権論や立法論から統制する必要性などを確認することができている。
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