研究課題/領域番号 |
17K13629
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研究機関 | 静岡大学 |
研究代表者 |
津田 雅也 静岡大学, 人文社会科学部, 准教授 (80633643)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 少年法 / 少年の刑事事件 / 少年年齢 |
研究実績の概要 |
2019年度は、アメリカにおける少年事件手続について文献調査を継続した。前年度に引き続いて、アメリカ・メリーランド州における少年事件の自動的移送制度の運用において重要な役割を果たしている逆移送制度について研究を進めた。すなわち、メリーランド州においては自動的移送制度が採用されているものの、相当程度の事件が逆移送制度により再び少年裁判所に戻されていることから、硬直的な自動的移送制度の運用ではなく、事案の性質等に応じて少年事件手続が活用されていることが看取され、その原因等について明らかにすることが重要であると考えられたのである。そこで、メリーランド州少年司法局(DJS:Department of Juvenile Service)の統計、逆移送に関する裁判例、移送評価に関して調査官の立場から書かれた分析を素材として、この点について検討を加えた。 その結果、①自動的移送対象事件は武装強盗、けん銃使用犯罪といった比較的重大事犯であるものの10~20%程度が少年裁判所に逆移送されていること、②裁判所における逆移送判断においては当該具体的事件における少年の関与の程度ではなく、行われたとされる犯罪の性質が考慮されていること、③調査官による分析によると、逆移送の決定において裁判官は調査官の意見、処遇適合性、公衆安全への危険、前歴を重視しており、とりわけ科学調査官の意見を重視していることが明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2019年度で研究課題を完了する予定であり、2018年度から引き続いていた論文は公刊したものの、メリーランド州の裁判例の分析や日本法への示唆を得る作業に時間を要しているため。
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今後の研究の推進方策 |
逆移送制度に関するメリーランド州の裁判例等について研究を進め、論文を公刊する(前期)。これを踏まえて、法制審議会部会(少年年齢・犯罪者処遇関係)において検討されている新たな手続・処分に関する議論を検討し、研究課題について一定の成果を得ることを目指す(後期)。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナ感染拡大の影響等により、海外調査ができなかったこと、海外文献の購入が想定より多くなかったことから、次年度使用額が生じた。2020年度も、新型コロナ感染拡大の影響により海外調査を行えるかは不透明であるため、文献調査のための文献購入を主たる使途とする計画である。
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