2019年度は、本科研事業の最終年度として、2018年度までに得られた知見を整理し、「アウトプット」するための作業を中心に行った。また、アウトプット作業を通して、さらに明らかになった課題を整理し、それらを解明するための研究計画を立て、実際に準備作業を行った。 2019年度に公表した論文としては、安田恵美「刑務所拘禁による『社会的排除』を回避するための施策に関する一考察」 現代の社会病理34号、安田恵美「教育講演:高齢犯罪者の社会復帰と権利保障」日本フォレンジック看護学会誌5巻2号がある。また、2019年2月に行ったフランス調査の成果は調査に同行した他の研究者とともに「フランス刑事施設等参観記録」國學院法学57巻3号に掲載した。その他、2019年度中に執筆作業を進めているものの現段階では未公刊のものもある。 また、研究を進める中で、高齢犯罪者の「社会復帰」のありかたについて考察を深めるためには、「社会復帰」の基礎となる当事者の主体性・意思・選好に関する諸論点についても研究を深めることが必要であることに改めて気が付いた。また、日本国内における問題状況を確認するために、2019年度後半は、高齢出所者の意思決定や選好に着目し、高齢出所者(当事者)および支援者に対する聞取り調査等も行った。この点について検討するにあたり、今後は、ヨーロッパ・フランスにおける「ヴァルネラビリティ」や「insertion sociale」にかんする議論から示唆を受けて、研究を進める予定である。
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