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2019 年度 実施状況報告書

詐欺罪と組織的詐欺罪の適用をめぐる考察―振り込め詐欺と悪徳商法に注目して―

研究課題

研究課題/領域番号 17K13636
研究機関成城大学

研究代表者

足立 友子  成城大学, 法学部, 准教授 (70452555)

研究期間 (年度) 2017-04-01 – 2021-03-31
キーワード詐欺罪 / 財産犯 / 経済犯罪
研究実績の概要

研究3年目である令和元年度は、ドイツにおける詐欺罪の議論並びに組織犯罪対策の現状の分析を行い、日本における現状との比較を行った上で日本法への示唆を得つつ、日本の詐欺罪規定並びに組織的詐欺罪の処罰についての今後のあるべき方向性を見出すことを試みた。
ドイツ刑法における詐欺罪規定は、日本の刑法における詐欺罪規定とは異なり、経済状況の変化を背景とした度重なる法改正によって、複雑な構造となっている。現在、詐欺罪の基本構成要件の条文である263条の後に、263条aから265条bまでの特別な詐欺罪規定が置かれており、そこでは、コンピューター詐欺、補助金詐欺、投資詐欺、保険の濫用、給付の不正入手、信用取引詐欺について規定されている。この中には、例えば264条の補助金詐欺の規定のように、相手方に錯誤が生じたか否かや補助金の交付決定が行われたか否かとはかかわりなく、補助金手続において欺罔行為が行われたことによって既遂となる、抽象的危険犯の構成をとる犯罪類型が含まれている。日本の詐欺罪規定の適用においても、行為者の行為によって生じる金銭的損失について重視しない「形式的損害説」の立場を徹底するならば、詐欺罪の成立時期は早期化し、場合によっては抽象的危険犯にかなり近づくことになる。そのことの当否を考える際の参考とするために、ドイツにおける上記の諸規定及びそれらをめぐる議論を把握するべく情報収集を行った。
他方で、ドイツにおいては組織犯罪対策についての関心が高い一方で、日本法のような組織的詐欺罪の規定は存在していない。その理由を探るために、ドイツにおいて問題とされる組織犯罪の現状の把握に努めるとともに、同種の事案についてどのような法適用がなされるかの検討を行った。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

2019年8月まで育児休業を取得し、休業中も研究を遂行してはいたが、平常時のように集中的には進められなかったことから、当初計画よりも研究の進行が遅延した。
また、本研究のテーマに密接にかかわる「特殊詐欺」について、近時も最高裁判所が新たな判断を示す判例を出し続けていることから、この点の検討についても当初の予定に追加して本研究に含めたいと考えている。

今後の研究の推進方策

昨年度に達成しきれなかった計画の内容を中心に、このテーマに関する新しい判例や議論の動向も踏まえながら、今年度の研究を進めていく予定である。
まずは、当初の研究実施計画で3年目に予定していた内容のうち、日独における組織犯罪対策の現状分析を行い、まだ手薄である、組織犯罪対策全般についての検討を進めたい。ドイツにおいては、組織犯罪対策について盛んに議論が行われている一方で、日本でいうところの特殊詐欺は組織犯罪としての視点からの関心を集めていないという相違もあり、興味深い。対応の違いの理由を知るためには、組織犯罪の概念や組織犯罪対策の背景の比較検討も必要と考えられる。
また、日本における特殊詐欺についての判例の動向を分析することも、組織によって行われる詐欺的行為にどう対応していくべきかを考える上で必要となろう。
これらの検討から得た示唆をもとに、本年度は、日独の組織犯罪対策の概要を比較するとともに、日本の組織的詐欺罪の規定の役割・位置づけを明らかにし、研究の完成を目指す。

次年度使用額が生じた理由

2019年3月に出産後、昨年度前半に産後休暇と育児休業を取得した。休業中も研究を遂行してはいたが平常時のようには進められなかったため、研究期間を延長して完成させることとし、予算を今年度に繰り越した。また、もともと一昨年度パソコンを購入する予定であったものの、当該年度には先行する支出のため購入が叶わず、残額を昨年度に繰り越して購入する計画だったが、昨年度は以前から使用していたパソコンで持ちこたえることとし、集中的に研究を進められるようになった今年度に購入することを予定している。

  • 研究成果

    (2件)

すべて 2020 2019

すべて 図書 (2件)

  • [図書] 判例プラクティス刑法Ⅰ総論2020

    • 著者名/発表者名
      成瀬幸典=安田拓人〔編)
    • 総ページ数
      470頁(うち8頁を執筆)
    • 出版者
      信山社
  • [図書] 刑事法の理論と実務①2019

    • 著者名/発表者名
      佐伯仁志ほか〔編〕
    • 総ページ数
      312頁(うち12頁を執筆)
    • 出版者
      成文堂

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公開日: 2021-01-27  

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