将来債権の差押えの許容性の問題については、学説からは差押債権者と第三債務者との間の利益衡量から考察するという一般論が主張されてきており、また、この問題の一領域である将来預金の差押えの許容性の問題については、最高裁決定(最決平成24年7月24日判時2170号30頁)は、支店順位方式による預金の差押えの許容性の問題におけるのと同様に、第三債務者の負担(識別容易性)に配慮する判断枠組みによって否定の結論を導いていた。このように、将来債権の差押えの許容性は、おおむね第三債務者の保護という視点から語られていたということができる。もっとも、第三債務者も債権の債務者であることには変わりがないことから、一定の場面において債務者一般に対する保護を超える保護を第三債務者に与えるのであれば、当該場面における債務者一般と第三債務者の立場の差異を論証する必要があると考えられる。このような観点から、昨年度に引き続いて本年度も、将来債権の差押えにおける第三債務者と将来債権譲渡における債務者の利益状況の差異に関して、検討を行うこととした。上記の利益状況の差異に関しては、債権行使権能の帰属についての債務者の利益に対する法の態度の観点から考察することとし、その検討の一部を公表論文に反映することとした上で、このような観点から、支店順位方式による預金の差押えの許容性の問題の判断枠組みを将来預金の差押えの許容性の問題の判断枠組みとして用いることの妥当性について、譲渡制限の効果に着目して考察を行ったところである。
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