錯誤者は過失ある表意者であるにもかかわらず、我が国では錯誤者の責任について十分に検証されていない。そこで、ドイツ法とイギリス法を比較法として取り上げ、日本錯誤法の特殊性を分析し、以下の知見が得られた。①我が国では故意の立証が難しく、詐欺の被害者が錯誤法に救済を求めた結果、本来は「過失ある表意者」であるはずの錯誤者を免責することが正当化されてきた、②ドイツ・イギリスでは一方で錯誤者の責任は厳格に捉えられ、他方で詐欺の概念が拡大されていることで過失ある欺罔者も責任を負う、③錯誤と詐欺が密接に絡み合う中、我が国では「過失ある表意者に甘い」という実態が浮き彫りとなった。
|