研究課題/領域番号 |
17K13644
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研究機関 | 一橋大学 |
研究代表者 |
小峯 庸平 一橋大学, 大学院法学研究科, 講師 (80707464)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 民事法学 |
研究実績の概要 |
本年度は、研究計画に従い、当初単一で不可分のものと考えられていたパトリモワヌ概念が、可分で移転可能なものへと変遷する過程を、フランスにおける複数の文献を比較検討することによって検証した。 20世紀初頭のテーズ1本、及び21世紀初頭のテーズ2本を比較検討することでフランスにおいて責任財産の中にある複数の財産塊の存在を説明する理論構造が多様であることがわかる。この方法は、パトリモワヌ概念と人概念との関係を切り離すか、人概念と可分なものへと変容させることでパトリモワヌ概念を可分・移転可能なものに変容させる。あるいは、パトリモワヌ概念を放棄することにより、責任財産を分割することを可能にする。 これらの理論的構造が明らかにすることは、責任財産の分割の基準や、それに必要な手続きなど、責任財産を分割する法技術的構造を検討する前提となるものであり、今後の研究の進展のために重要な意義を有する。また、これらの理論的構造を比較分析することにより、日本における同様の理論の適用可能性を検討する際に重要な意義を有する。パトリモワヌ概念を持たない日本においては、パトリモワヌ概念を放棄する考え方が最も参考になるところであるが、その際においても、責任財産が分割されること自体は認められているため、パトリモワヌ概念についての検討が、同概念を持たない日本においても意義を持つことを明らかにするものである。 また、本年度は、中間的な研究成果の公表が行われた。10月には日本私法学会において個別報告を行ったほか、法学協会雑誌135巻9号及び12号に掲載された「責任財産の分割と移転のための一考察(3)(4・完)」は、本研究の成果である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現時点での研究の進展は、研究計画調書に記載されたとおりである。また、資料を分析することにより、一定の有意義な結果が得られており、時間的な若干の遅れはあるものの、続く研究を進める意義も失われていないため、研究計画の内容上の変更の必要はない。 このように、研究課題は順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
平成31年度の課題は、パトリモワヌを分割する諸々の法制度が、いかなる法技術を用いているかを明らかにすることであるが、これを明らかにするためには、法制度が現実に社会において担っている意義を看過することはできない。そのため、現地での調査研究を行い、研究課題の更なる進展を予定している。
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次年度使用額が生じた理由 |
国内で研究成果を公表する機会が当初計画していたより多くなり、本年度予定していた以上の時間を公表(準備)活動に割くことになった。そのため、本年度予定していた海外での資料収集を行うことができなかった。 そこで、海外での資料収集等を次年度にまとめて行うこととした。
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