本研究は、少数株主の締出しの場面を念頭において、対象会社の少数株主による事前の規律づけのあり方を探求するものである。このような研究課題に取り組むため、平成30年度においては、平成29年度に一部変更した研究計画にしたがい、それまでの研究成果の公表作業とドイツとイギリスにおける公開買付規制を対象とした調査・分析などを行った。 平成30年度の研究実績として、主に、次の2点があげられる。第1に、前年度以前のものも含む、これまでの研究成果をまとめ、日本私法学会第82回大会にて研究報告を行った。この報告によって、対象会社の少数株主による事前の規律づけの重要性を一定程度明らかにできたと思われる。この報告の原稿については、その英文要旨とともに、平成31年度に刊行予定の学会誌(私法81号)に掲載されることが決定している。 第2に、東京地決平成30年1月29日金判1537号30頁を対象とした判例研究を行った。同決定は、いわゆる独立当事者間での二段階買収の事例に関するものであり、裁判所は、当事会社間で設定された買収対価の公正さを肯定する旨の判断を下した。もっとも、同決定の事案は、買収会社が対象会社の主要株主の一部との間で事前に公開買付応募契約を締結しており、対象会社において株主間の利害対立が生じていたと評価できるものであった。このような状況のもとで少数株主の過半数による承認という措置が有効であるかを検討する必要があった。前記の判例研究にあたっては、最終的な結論を留保せざるを得なかったものの、このような研究を通じて、次年度に実施予定の少数株主の過半数による承認に関する研究の方向性を確立することができた。 なお、これらと同時に進行させていた諸外国の公開買付規制の研究については、その成果をできる限り早期に公表できるように、次年度も継続する予定である。
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