契約法における規制手法としての任意／強行法規と社会的厚生

2018 年度 実施状況報告書

• 研究課題/領域番号: 17K13647
• 研究機関: 名古屋大学
• 研究代表者: 松田 貴文 名古屋大学, 法学研究科, 准教授 (00761488)
• 研究期間 (年度): 2017-04-01 – 2021-03-31
• キーワード: 民法 / 契約 / 任意法規 / 強行法規 / 法の経済分析

研究実績の概要

本研究は、私人間を規律する法規定の形式的特徴が、任意／強硬法規としてどのような機能を果たし、いなかる形で社会的厚生に影響を与えるかという問題について検討を行うことを目的とするものである。
法規定には、いかなる規制目的の観点からその内容が定められるべきかという問題とは別に、一定の規制目的および内容を前提としていかなる形式において定められるべきかという問題が存在する。そして、前者の問題については、従来より自由、正義、厚生の観点からさまざまな具体的論点において議論が展開されてきているところ、後者の問題については必ずしも十分な分析が行われているとはいいがたい。そこで、本研究は自由、正義、厚生の観点から後者の問題を検討しようとするものであるが、本年度は以下の作業を行った。
１．前年度に収集した資料に基づいて、批判法学の議論を素材として法形式と自由、正義の価値の関係の分析を行った。それにより、法形式に関する議論を整理するための分析軸を抽出する手掛かりを得ることができた。論文を執筆中であるが、公表には至っていない。
２．前年度に収集した資料および今年度に収集した資料に基づいて、法の経済分析の観点から法形式の機能分析に関する検討を行った。法形式に関する伝統的な議論に加えて、非対称情報に対処する手段として法形式がいかなる機能を果たすかという議論の検討も行った。限定合理性の観点から分析する文献を収集したので、検討予定である。こちらも並行して論文を執筆中であるが、公表に至っていない。

現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

本年度は、前年度の収集した資料の精読と分析を行う予定であった。具体的には、批判法学の文献と経済分析関連の文献が対象であり、相当程度この作業を遂行することができたが、分析の途中で検討を要する新たな問題や文献がいくつか現れた。特に、経済分析については伝統的議論に一石を投じる非対称情報に関する文献があった。これは本研究のテーマを論じるにあたって必読と考えられるため、それらの精読・分析に時間を要することとなり、予定していた作業の全体を終えることはできなかった。その結果、業績を成果として実現することができなかった。もっとも、研究内容としては発展的に進捗しており、最終的に業績の内容を充実させるための作業を遂行することができたものと考えている。

今後の研究の推進方策

いくつかの検討を要する論文を整理したうえで、成果にまとめ上げるという作業を行うこととしたい。
また、理論について一定の成果を得ることができれば、具体的な適用についても検討を加えたいと考えている。

次年度使用額が生じた理由

旅費等の支出が不要となったことや、購入予定であった書籍の購入が遅れているため、当該助成金が発生した。書籍は次年度に購入する予定である。