研究課題
本研究は、契約の規制手法としての強行法規と任意法規との意義や機能について、基礎的な検討を行うものとして開始した。研究を進める過程において、一昨年度頃より、任意法規によるか強行法規によるかという問題は、ルール形成を個人に委ねるか国家が担うかという問題に他ならないという考察に至り、そのような視点から規制手法を分析する研究の端緒として、昨年度は論文を公表した。本年度の研究は、そのような研究をさらに進めることができた。具体的には、まず、昨年度に公表した論文の理論枠組みを、携帯電話サービス契約の内容規制に関する立法と裁判の比較検討に対して応用することによって、立法による契約内容規制が適切な場面と、裁判による契約内容規制が適切な場面があり、その区別にとっては、判断主体の情報収集・処理能力が重要であるということを考察した。また、こうした理論的および応用的検討を通じて、法規制の意義は、望ましい規制を行うためにより効率的な情報処理を行うことであり、適切な規制手法とはより効率的に情報処理を行い、社会をよりよい状態に移行させることができる規制手法であるという基本的知見を得ることができた。この方向性から、本年度はさらに、契約主体がより効率的な情報処理を行うために、「他人と同じ契約条項を用いる」こと、つまり情報を共有することに一定の意義があること、またそうであるとすると、情報共有に失敗が生じうるため、そのために法制度が果たすべき役割が存在すること、を考察した。この情報共有という視点については、今後の研究でさらに進めていきたいと考えている。
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法律時報
巻: 94-3 ページ: 25-33