本研究では、欧州での比較契約法の議論状況の調査・検討に基づき、主として次の2つの成果を挙げた。 第一に、日本のM&A契約実務における、英米法での文言主義による契約解釈を前提としたドラフティングと、裁判所による客観主義を前提とした契約解釈との間に溝が生じていることを明らかにし、その溝を架橋する方法を提示したことである。この研究成果については、2019年6月にシンガポール国立大学にて開催された16th ASLI Conferenceにおいてワーキング・ペーパーを発表し、「Interpretation of Corporate Acquisition Contracts in Japan: A Legal Transplant through Contract Drafting」とのタイトルでAsian Journal of Comparative Law 16巻1号106-123頁に掲載した。 第二に、瑕疵担保責任や表明・保証においてしばしば問題となる法人の主観的態様(目的物の瑕疵や表明・保証違反の事実についての善意・悪意)の判断方法について、英米法と日本法との間にある差異を明らかにしたことである。この研究成果は、「Knowledge of Corporate Party in Contractual Liability: An Analysis of Japanese Law and Interpretation from Function-Based Approach」とのタイトルで、2021年1月開催の2nd Asian Law Junior Faculty Workshop(新型コロナウイルスによるパンデミックの影響でオンライン開催)にて発表した。
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