研究課題/領域番号 |
17K13654
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
中本 香織 早稲田大学, 法学学術院, 助手 (10758064)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 当事者適格 / 訴訟追行権 / 実体適格 / 訴訟担当 / 債権者代位訴訟 |
研究実績の概要 |
2017年度は、日本における訴訟担当概念及び当事者適格概念の意義を明らかにするため、訴訟担当概念及び当事者適格概念の生成過程を中心に研究を進めた。 訴訟担当概念については、「訴訟追行権」と「判決効拡張」という二つの視点からその内容の分析を試みた。分析を行うにあたっては、我が国の訴訟担当概念及び訴訟担当の判決効拡張の規定であるとされる民事訴訟法115条1項2号に加え、我が国の民事訴訟法の母法であるドイツ民事訴訟法を対象とした。我が国のいわゆる独創条文である民事訴訟法115条1項2号と、我が国の民事訴訟法の母法であるドイツ民事訴訟法における訴訟担当の判決効拡張とでは、その範囲に相違があることから、我が国の民事訴訟法115条1項2号の解釈の変遷を辿り、その原因が奈辺にあるのかを探った。 また、我が国の訴訟担当概念とドイツ民事訴訟法における訴訟担当概念の相違に関する分析を元に、今次の債権法改正における債権者代位訴訟について研究を行った。債権法改正後の債権者代位では、被代位権利について債務者の処分権限が喪われないことから、訴訟法上も債務者は当事者適格を有することになると考えられる。この場合、代位債権者と債務者とが並んで当事者適格(ないし訴訟追行権)を有することとなるも、債権者代位訴訟について民事訴訟法115条1項2号が適用されることに異論はない。そこで、権利帰属主体と訴訟担当者双方に当事者適格が認められ、かつ、訴訟担当者に対してなされた判決の効力が権利帰属主体にも及ぶ訴訟担当の類型が認められるのかについて、検討を行い、ドイツ法上認められるものとは異なる、我が国流の並存的訴訟担当として構成することができると結論づけた。 加えて、当事者適格概念、実体適格及び訴訟追行権の関係を明らかにするため、この三概念の生成過程を探る研究にも取り掛かった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、本研究に関連する資料収集に注力し、日本法及びドイツ法の資料を多く収集することができた。また、問題点を整理する中で、当初2017年度に研究を予定していた実体適格と訴訟追行権概念の分析に先行して、今次の債権法改正により訴訟担当概念の分析を行う必要があると考え、歴史的・比較法的観点から訴訟担当概念の研究を行うに至った。 もっとも、当事者適格概念、実体適格及び訴訟追行権概念の生成過程についても既に研究を開始しており、2018年度には研究の成果の一部を論文で公表する予定である。 なお、本年度の研究の成果は、中本香織「訴訟担当概念の比較法的考察と民事訴訟法115条1項2号の適用対象に関する一試論」早稲田法学93巻1号117頁以下(2017)において公表した。
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今後の研究の推進方策 |
2018年度は、我が国における当事者適格概念の生成過程に関する研究を引き続き行い、また、当事者適格、実体適格及び訴訟追行権概念の関係性の分析に重点を置いて研究を進めていく。研究の成果は、いくつかの研究会で報告を行う予定である。
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