本研究では、勧誘規制法理としての適合性原則とは区別される、取引開始規制法理としての適合性原則と、受託規制法理としての適合性原則の存在が下級審判例において私法上肯定されていること、ただし、その義務水準は、勧誘規制とは明確に区別されており、低次に止め置かれていることを明らかにした上で、このような法状況は、ドイツ法との比較において一定の類似性を有するものであり、また、投資者権利保護の視点及び市場の視点双方から正当化可能であることを明らかにした。 本研究は、今日的投資市場における適合性原則の新展開を明らかにし、ネット証券会社と投資者間の責任配分の一つの在り方とその判断枠組みを提示するものである。
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