研究3年目は、日EUの十分性相互認証の意義について研究を進めてきた。特に、この相互認証がもたらした影響とEUにおけるGDPRの日本への影響について研究を行った。単なる法制度の比較検討にとどまらないよう、日EUの法制度の根底にある個人データ保護に関する思想の異同について考察を行った。特に十分性決定の審査プロセスに深く関与しつつ、EUの対外的影響力を実証的に考察することができたことは本研究における貴重な成果である。 また、研究過程において、個人データ保護という基本権をめぐる日EUの共通性の発見が、貿易協定(日EU経済連携協定)とも関連することを理解することができ、人権と貿易をめぐる争点が顕在化しつつあることを把握することができた。本来であれば、取引材料とならない人権が、貿易協定とは別の交渉プロセスを歩みながら、それを意識してきたことがEUの研究者からも指摘されつつある。 当初の研究計画では、越境データの規制について、APECの越境プライバシールール(CBPRs)とEUの拘束的企業準則(BCRs)の関係についても考察を深める予定であったが、EUの十分性決定において、両者の断絶が指摘され、グローバルな越境データ規制をめぐる断絶がますます明らかになってきた。個人データ保護をめぐる衝突が依然として継続しており、このことも研究成果の一つとして残しておく必要がある。 これらの研究成果は、2020年中に英語論文で公表予定である。
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