本研究ではメキシコの麻薬紛争に着目し、暴力が人々の日々の生活を脅かすなかで、非常にハイリスクな集合行為である自警団運動が発生、拡大する条件についての分析を進めた。麻薬紛争の下、とりわけ貧困状況の厳しい辺境地域において、市民に対する暴力被害が急激に高まり、腐敗した地方当局に代わって市民の保護を担いうる公的機関も存在しないなかで、自警団運動が市民にとって現実的な選択肢となっていった過程を論じた。とくにミチョアカン州で勃興した自警団運動に着目し、強固な組織構造の存在や地元コミュニティの連帯、高い戦闘能力、そしてフレーミングの効果が、大規模な運動への発展に寄与したことを明らかにした。
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