研究課題/領域番号 |
17K13669
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
前田 健太郎 東京大学, 大学院法学政治学研究科(法学部), 准教授 (00613142)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 行政組織 / 行政改革 / ジェンダー |
研究実績の概要 |
今年度は、昨年度に引き続きジェンダーの視点から官僚制を見直す作業を続けた。昨年の報告書でも述べたように、現代日本の行政組織における女性管理職比率の少なさを説明する上で重要であると思われるのは、1980年代以降の行政改革の過程で、女性管理職比率の向上というアジェンダが明示的な形では浮上してこなかったことにある。これを欧米諸国と比較した場合に興味深いのは、NPM改革を進めたとされる国々において、こうした改革の一環として、同時に管理職における女性比率の向上が進められたことにある。この観点から日本を見た場合、その特徴はNPM改革自体が中心的なアジェンダとしては浮上せず、むしろ「内閣機能の強化」など、(男性の)首相の手に権力を集中する改革が進められたことであった。このような経緯を考える時、日本が欧米諸国における行政改革の方向から逸脱してきたという事実に改めて目を転じざるを得ない。そのような問題関心に基いて考える時、見逃すことができないのは「外圧」という要素である。日本では、男女雇用機会均等法の制定や男女共同参画会議の設置のように、国際社会における規範の圧力によってジェンダー平等への流れが生じることが、これまでしばしば見られた。これに対して、1980年代以降の行政改革で見られたのは、主としてアメリカからの「外圧」に対応するために、首相のリーダーシップを強化することをめざす試みである。行政組織におけるジェンダーの視点から見た代表性の欠如という明確な問題が存在したにもかかわらず、それがアジェンダとして浮上しなかったのは、それとは相性の悪い改革課題が行政改革の中心に浮上したからではないかと考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
女性管理職の比率を説明するという課題に取り組む上で、日本の行政改革におけるジェンダーの視点の不在を説明するという、より広い問題設定に切り替える必要性に直面している。そのため、思ったほどの速度で研究を進めることができていない。
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今後の研究の推進方策 |
昨年度に比べると、理論的な見通しはやや明確になった。だが、「内閣主導」や「官邸主導」といった課題が重視されるようになった経緯自体を説明する上でも、何らかの形でジェンダーの視点を導入しなければならないように思われる。その関係から、2000年代以降の行政改革の経緯についても検討したいと考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究計画を組み直している関係上、予定していたペースで書籍を購入しなかったため。
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