研究課題/領域番号 |
17K13669
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
前田 健太郎 東京大学, 大学院法学政治学研究科(法学部), 准教授 (00613142)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | ジェンダー / 行政組織 / 行政改革 / 民主主義 |
研究実績の概要 |
今年度の前半は、昨年度に取り組んでいた政治学におけるジェンダーの主流化という課題に実践面から具体的に取り組むべく、『女性のいない民主主義』と題する政治学の概説書を刊行した。ここでは、既存の政治学の教科書に掲載されている学説を総合的に見直すという方針を採用し、これまで主として女性に関わる争点として用いられがちであったジェンダーの概念を、政治現象全般を分析するための視点として設定している。単に、日本の政治家や高級官僚に女性が少ないという現象そのものを扱うのではなく、こうした政治エリートにおけるジェンダー・バランスの偏りがありながらも、日本が民主主義の国だと言われてきたこと自体を、問題として取り上げたのである。本書は、日本の政治そのものだけでなく、その政治に対する見方を問い直すものとなった。
今年度の後半は、憲法学の学会において、現在進めている研究の大まかな全体像を報告する機会を得た。ここでは、『市民を雇わない国家』における「小さな政府」への関心と『女性のいない民主主義』におけるジェンダーへの関心をベースに、戦後日本における「日本型平等社会」の成り立ちに関する試論を提示している。ここでは、日本の「平等社会」が基本的には「男性の間の平等社会」であると規定した上で、それが日本の憲法を初めとする政治制度といかなる関係を持っているのかを考察した。
昨年度までの研究において明らかになった日本の行政改革におけるジェンダーの視点の欠如については、これらの著作や学会報告においても言及はしたものの、今年度は新たな知見を得るには至っていない。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
行政組織に特有の論理を抽出する上での困難に直面している。行政組織の管理職における男女比という数値には大きな注目が集まっており、そのデータ自体を入手することはできるものの、その数値の背後にある歴史的な経緯や、それを規定する力学を抽出するのは容易なことではないことが判明した。このため、全体として、当初の女性管理職比率から、日本政治における男性優位の構造へと、研究対象が推移している。
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今後の研究の推進方策 |
研究の方向性が当初の予定から変わってきている以上、それを元の路線に戻すのは現実的ではない。現在は、戦後の「日本型平等社会」をジェンダーの視点からとらえ直しつつ、その背後にある力学を探るという形で研究を進めており、その線に沿って研究成果を出すことができればと考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
想定していたほど書籍を購入しなかったため。
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