本研究の目的は、1990年代以降の日本における中央省庁組織の制度設計過程の分析を通じて、行政組織の制度設計に関するこれまでの通説的見解を批判的に検討し、わが国における中央省庁組織の設計に対する規定要因を明らかにすることである。 上記目的を達成するために、本研究では、数理モデルや統計的分析方法を用いた海外の関連先行研究の知見を摂取しながら、1990年代以降の日本の中央省庁組織を対象とした国家行政組織の制度設計に対して一貫した説明を可能とする行政学の理論モデルの構築を試み、昨年度までの時点で、アメリカ政治学の通説的見解が必ずしも日本において妥当するわけではないことを実証した。また、1990年代の政治・行政改革において首相の権限が強化された後も、国会の衆参両院で与党単独の法案可決ができない状況にある時には、首相の制度選好に即した自律性の低い中央省庁組織が設計されにくいことを明らかにした。 以上のような研究目的に基づき、さらには昨年度までの研究実績を発展させる形で、本年度は日本の中央省庁組織に関するデータセットを用いた統計的分析の結果を国際学会で報告し、また、中央省庁の人事システムに関する研究を行った。後者の研究業績としては、『年報行政研究』に掲載された論文をあげることができる。これらの業績は、行政組織の制度設計を介した官僚制に対する政治統制に注目した研究から、人事を利用した官僚制に対する政治統制の研究への展開を示すものであり、日本の政官関係研究の発展に資するものと言える。
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