研究課題/領域番号 |
17K13678
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研究機関 | 中央大学 |
研究代表者 |
舟木 律子 中央大学, 商学部, 准教授 (20580054)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | ラテンアメリカ / 先住民 / 自治制度 / 質的比較分析 / 制度運用 |
研究実績の概要 |
報告者は所属先の中央大学より在外研究期間を取得し、カナダ・ヨーク大学ラテンアメリカ・カリブ研究センターに研究の拠点を移した。ヨーク大学では、ラ米地域における先住民自治の専門家であるゴンサレス准教授の協力を得ながら、本課題で取り組んできた先住民自治の制度化要因の解明に関連する最新の動向について情報収集を進めることができた。また、これまでの法制度調査の結果および、それを踏まえ、質的比較分析(fs-QCA)を用いた今後の研究デザインに関する仮説をまとめ、2019年5月に同大学にて開催されたカナダ・ラテンアメリカ・カリブ学会にて、研究協力者のルベン・サムディオ助教(北海道大学法学研究科研究員)とともに研究報告を行った。同学会には米国やラテンアメリカ出身の研究者も多数参加しており、多角的視点からの本研究に対する反応を知ることができた。特にフィールド調査の経験の豊富な研究者からの、先住民自治をめぐる法律とその運用との乖離の問題に関する指摘は、同課題をさらに発展させる上で有効な示唆となった。 2020年2月には、ヨーク大学にて公開研究会Indigenous and Peasant Autonomy in Latin America: Agency, Governance and Land Rightsを開催し、ゴンサレス氏、アルベルト・ウルタド大学(チリ)のマリア・エレラ氏とともに研究報告を行った。討論者のウェバー氏(ヨーク大学政治学部)をはじめ、参加者からも有意義なコメントを得ることができた。また同月「ラテンアメリカの先住民族と法―制度と制度運用の乖離の規模を特定する、先住民族の土地の権利に焦点を当てて」というテーマで、基盤B「『先住民の権利に関する国連宣言』の実効性―先住民族・国家・国際機関への影響」研究会にて、オンラインでの研究報告を行い、有意義なコメントを得ることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2019年度は、先住民自治の制度化状況についての現状分析まで完了した。だが本年度実施した中間報告でのディスカッションを踏まえ、研究目的として制度運用促進要因の解明までを射程にいれることとした。この研究目的の修正に伴い、今年度の後半は当初予定したような研究成果の発表のための準備を進めることは見送り、「結果現象」(従属変数)となる状況について、改めて不足する情報収集を行い、これを質的に分析する作業に終始した。
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今後の研究の推進方策 |
2020年度は、新型コロナウィルスの世界的感染拡大のため、現地調査や学会報告などの研究活動に関しては、実施がきわめて困難と考えて計画を立て直す必要がある。報告者は5月と7月に国際学会での研究報告を予定していたが、エントリーしていた二つの学会(LASA、IPSA)は、それぞれオンライン開催および翌年への延期となった。現地調査に関しては3月の中旬に実施を予定していたものの、ボリビアに到着した2日後には、外出禁止等の規制が急激に厳格化し、それ以降の調査はかなわなかった。 今後は、第一に先住民自治の制度化状況についての調査結果を論文にまとめる作業を進め、ゴンザレス氏、エレラ氏(チリ)と共同で発表する予定である。また制度運用実態に関しては、二次資料を中心に収集作業を進め、国際共同研究Aでさらに発展させた結果の発信に向けて、査読修正編集等の作業を進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初の研究目的は、ラテンアメリカにおける先住民自治の「制度化要因」を明らかにすることであったが、2019年度初頭に行った研究成果の中間報告を踏まえ、研究目的を「制度運用促進条件」の解明へ変更した。この変更にともない、年度後半は不足する情報収集に終始した。 2020年度は、3月に実施したボリビア現地調査の経費と、これまでの研究成果に関するスペイン語および英語による論文作成にかかる校正代、研究資料の公開等を目的としたウェブサイト作成の経費として使用する計画である。
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