研究実績の概要 |
前年度までに完成した理論を元に実証研究を行い、論文としてまとめたものを、「Election Monitoring and Government Performance: Theory and Experiment」の表題でAnnual Conference of the European Political Science AssociationとCentral and East European International Studies Association-International Studies Association Joint International Conference, Belgradeの二つの国際学会で口頭発表した(双方審査有)。また、日本選挙学会総会・研究会にて口頭発表した(招待有)。学会で得られたフィードバックを受けて推敲、校正の上、現在英文査読誌に投稿中である。本研究によって得られた政策的示唆は、以下の四点に集約される。まず、(1)「半民主国家」と呼ばれる政体において、選挙監視機関が果たす役割は、監視対象政府による公共財の供給を促すこともあれば、抑止する方向に働くこともある。特に、(2)21世紀において増加している、官僚組織の比較的強固な、しかし民主化度の低い政体においては、監視対象政府に対して批判的・敵対的な監視機関は当該政府の公共財供給に好ましくない影響を与えやすい。また、(3)官僚組織の脆弱な政体においては、選挙監視によって実現する公正な選挙が公共財供給に与える影響は大きくない。最後に、(4)半直感的ではあるが、選挙監視機関によって選挙不正が暴かれても、選挙不正が蔓延している政体においては、それが必ずしも良い為政者の選別には繋がらない。
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