研究課題/領域番号 |
17K13681
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研究機関 | 法政大学 |
研究代表者 |
溝口 修平 法政大学, 法学部, 教授 (20648894)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | ロシア / 権威主義体制 / 愛国主義 / 選挙 / 政治学 |
研究実績の概要 |
本研究は、2014年のウクライナ危機以降、ロシアの権威主義体制にいかなる変化が生じているかを明らかにしようというものである。昨年度に引き続き、本年度も2つの観点から研究を進めた。 第一に、現在、ロシア社会のどのような階層がプーチン体制をもっとも支持し、どのような階層がもっとも批判的なのかを、各種世論調査機関の公表するデータをもとに分析した。特に、先行研究を踏まえ、ロシアの中間層が体制に対してどのような態度を有しているかの分析を重点的に行った。それにより、ウクライナ危機を境に、体制支持の傾向に関する階層ごとの差異が鮮明になってきていることがわかった。ある種の社会の分断とも言える状況が進行していることが浮き彫りになった。 第二に、制度面でのロシアの変化を考察するために、旧ソ連諸国の憲法改正に関する比較研究を行った。特に、大統領の任期延長の事例を比較することで、個人主義的な権威主義体制がいかに強化されていくのかを考察した。これは、権威主義体制において指導者はどのような時にいかにして政治制度を操作するのか、またどのような場合には政治制度に拘束されるのかという問題を明らかにしようという試みである。また、ロシアで2020年度初頭から大規模な憲法改正が進み、プーチン政権がさらに長期化する可能性が出てきたために、上述の問題意識を踏まえてその分析も行った。 本研究は、ロシアの権威主義体制の安定性というテーマに、社会階層と政治制度の両面から接近した。これは現在のロシア政治のあり方を理解する上で欠かせない上に、比較政治学の権威主義体制研究にも示唆を与えるものである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究課題の進捗が遅れている原因は二つある。第一に、新型コロナウィルス感染拡大の影響でロシアへの渡航ができなくなり、2020年度に報告予定だった学会も延期となった。そのため、必要なデータの収集や研究成果の公表に遅れが生じている。第二に、2020年初頭からロシアでは大規模な憲法改正が進み、それによりロシアの政治体制に大きな変化が生じる可能性がある。この点は本研究課題で取り組んできた問題であるため、以上の点を踏まえた上で研究をまとめる必要が生じている。
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今後の研究の推進方策 |
ロシアへの渡航がしばらく困難であるため、各種データベースやオンラインで得られる情報で出来る限り研究を推進する必要がある。今後は、幾つかの世論調査の結果を照らし合わせて、プーチン体制の支持基盤についての分析を深めるとともに、ロシアの憲法改正の動向をフォローして、それが政治体制に与える影響を精査したい。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウィルス感染拡大の影響で、モスクワ渡航を中止せざるを得なくなり、研究遂行期間を延長することになった。2020年度も渡航できない可能性が高いため、これまでの成果をまとめるための資料購入、英文校閲などに助成金を使用する予定である。
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