本年度においてはまず、史料を収集し、分析する作業を行った。第一に公刊史料の収集・分析に努め、その上で非公刊史料の収集・分析に力を注いだ。なお、史料を収集し、分析する作業と並行して、学術文献・論文の収集、分析にも当たった。これら作業を通して、交付申請書に記載した3つの課題に関する重要な知見が得られたと考えている(3つの課題とは、次のとおりである。① 中国大国化構想の前提を成したローズヴェルトの「大国による世界管理」構想に関する検討。② 中国に期待されたアジアにおける地域的役割についての考察。③ 中国が国連安保理常任理事国としての地位を獲得するまでの中国大国化構想の展開過程、特にカイロ宣言、ヤルタ密約の再考)。 上記の作業を通して得られた知見をもとに、中国大国化構想に関する非公刊論文(2015年12月に中国・長春で行われた国際シンポジウム、「近代中国と東アジアの新環境」に提出した論文と、2016年10月の日本国際政治学会・研究大会に提出した論文)のブラッシュアップを行った。この成果は、来年に公刊される予定の論文集において発表する予定である。 また、2017年11月に開催された大阪大学政治史研究会で「F.D. ローズヴェルトの秩序構想と戦後アメリカ外交―中国大国化構想を中心に」と題した研究報告を行った。この報告は、ローズヴェルトの中国大国化構想の内容を確定させた上で、その戦後における展開をも見ようとしたものである。この成果は、現在執筆中の単著に反映させる予定である。
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