研究課題/領域番号 |
17K13688
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
田中 慎吾 大阪大学, 国際公共政策研究科, 招へい研究員 (80733534)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 日英関係 / 日米関係 / 外交史 / 原子力協力 / 国際政治 |
研究実績の概要 |
研究1年目の2017年度における研究実績としては、主として研究発表と英国での史料調査の2点を挙げることができる。 第1に、研究発表は、2018年1月開催の第2回大阪大学豊中地区研究交流会において、ポスター発表を行った。本発表は、「日英原子力協定(1958)~対米自主と協力の葛藤~」と題したもので、1958年6月16日に成立した二つの原子力協定、すなわち、日米原子力一般協定と日英原子力一般協定の内、特に後者の協定を分析したものであった。 そもそも3年前の1955年、日本は米国と原子力研究協定を締結していた。この成立によって米国アイゼンハワー政権は、日本の原子力市場をほぼ手中に収めたと判断していた。このような状況下において1958年に、日本は米国と原子力協定の改定交渉を行う一方で、英国と原子力一般協定を締結したのである。 そこで本発表は、この日英協定の成立要因と過程について、日本側の要因を分析したものであった。同発表における暫定的結論としては、日本が英国に接近した大きな要因として、日本が原子力分野における過度の対米依存を懸念し、自主性の確保を目指したこととした。くわえて本発表では、日本側はそうした自主性を担保として、当時米国と行っていた原子力協定の改定交渉のみならず、日米安全保障条約の改定交渉に対しても影響力の行使を狙っていたことを示唆した。 第2の研究実績としては、2018年2月から3月にかけて行った英国国立公文書館における史料調査が挙げられる。本史料調査では、日英原子力一般協定の成立に至る要因と過程について、英国側から詳細に分析するべく英国外務省等の関係省庁の史料を広く収集した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
「やや遅れている」を選択した主たる理由は、本研究の本来の目的が、日米原子力一般協定と日英原子力一般協定という二つの原子力協定が、なぜ同日に署名されたのかを解明するものであるにもかかわらず、米国での史料調査が行えていないためである。そもそも2018年2月から3月にかけて渡米する予定であったが、トランプ政権による予算制限により、米国国立公文書館ならびに大統領図書館が閉鎖されることが予想されたため、米国への渡航を取り止めた次第である。
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今後の研究の推進方策 |
本研究の目下の目標としては、収集が終わっている日英協定についての英国側の史料分析を早急に終わらせることである。 そもそも日英原子力協定の締結は、日本のみならず英国にとっても極めてリスクの高いものだったと考えられる。なぜなら当時の日英両国は、米国から安全保障協力をより引き出すべく対米交渉を行っており、米国との良好な関係を構築ないし維持することが求められていたからである。それではなぜ日英両国は米国との関係を悪化させかねない日英協定の締結に至ったのか。そしてその締結は、安全保障をめぐる日英双方の対米交渉にどのような影響をもたらしたのか。さらには、日英と日米の二つの協定はなぜ同時に締結されたのであろうか。 本研究は、これらの点について、今回英国で収集に成功した史料を参考に解明を試みる。得られた成果については、国内外での学会発表を行うとともに、独立論文として投稿を行っていく。なお現在、日本国際政治学会での発表に応募中である。 なお、日米協定については、可能な限り今年夏までには渡米し、米国での史料収集を終えたいと考えている。そして秋までには史料の分析に着手したいと考えている。ただし、今年度が本研究の最終年度であることから、まずは日英協定についての成果を確実に出すよう努めていく方針である。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額が生じた主な理由は、米国での史料調査が行えなかったことである。よって使用計画としては、第1に、可能な限り米国での資料調査が実施できるよう調整する。くわえて第2に、研究の推進に必要なPC機器を今年度早期に購入する。これらにより着実に研究の成果をまとめ、公表していく方針である。
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