研究実績の概要 |
本研究課題の最終年度となった2019年度においては、前年の2018年度に英国ロンドン近郊に所在する国立公文書館において収集した、1958年成立の日英原子力協力協定に関する外交史料の調査・分析作業に主として従事した。その結果、スエズ危機以前の英国イーデン政権は、日本に対して核エネルギーの軍事利用分野の協力をも視野に入れていたことなどを突き止めた。しかし同危機後、後を継いだマクミラン政権では対米協調へと舵をきった結果、野心的な対日協力は消え去ったのであった。 このような研究成果に基づいて、令和元年9月、“The U.K.-Japan Bilateral Agreement of Nuclear Energy in 1958: Seeking Self-Determination under the Pax-Americana,”と題した研究発表を、筑波大学にて開かれた Conference of European Association for Japanese Studies にて発表した。 また、こうした原子力外交に関するこれまでの知見に基づいて、Journal of Contemporary East Asia Studiesより、武田悠氏の新著『原子力外交』の書評の依頼を受け、それを2019年10月に英文にて公刊した。 くわえて、トランプ政権の混乱による施設閉鎖の影響を受けて中止していた、米国における資料調査を2019年3月に実施した。しかしメリーランド州の国立公文書記録管理局における調査開始から数日後に、コロナウィルスが急速に問題となり施設の閉鎖に見舞われた。 今後は、研究課題によって入手した英米双方の外交史料の分析を進め、研究成果を積み重ねていく方針である。
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