研究課題/領域番号 |
17K13690
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研究機関 | 国際教養大学 |
研究代表者 |
堀井 里子 国際教養大学, 国際教養学部, 助教 (30725859)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | EU国境管理 / 移民・難民 / NGO / 海上捜索救援活動(SAR) |
研究実績の概要 |
本研究は、国境なき医師団と移民オフショア支援基地(MOAS)という二つの非政府組織(NGO)が欧州難民危機という文脈において開始したボートピープルの捜索救援活動を事例に、NGOがEU国境管理政策において果たす役割を明らかにすることが目的である。 初年度にあたる平成29年度は、年度前半にイギリス・バッキンガム大学に客員研究員として滞在していた立地上の優位性を背景に、先行文献と関連資料の収集、専門家との意見交換および現地調査を行った。まず、イギリス・オックスフォード大学難民研究所主催のセミナーに参加し、移民をめぐる政策においてNGOと国家の関係性を研究するMollie Gerver氏(ニューカッスル大学)を初めとする専門家と意見交換を行った。また、イギリス・ケンブリッジ大学において犯罪学の専門家であるパオロ・カンパーナ氏と面会し、同氏より地中海域での移民の密入国と国際犯罪ネットワークについて知見を得た。さらに、イタリア・シチリア島での現地調査では、カタニア大学で地中海域を中心としたEU国境管理やNGOの活動を研究するDaniela Irrera氏およびRosa Rossi氏との意見交換を行い、またOxfamとDiaconia Valdeseという二つのNGOが設立した移民・難民サポートセンターにおいて職員およびシリア難民に会い聴き取り調査を行った。また、バッキンガム大学をプラットフォームとして、資料の収集を精力的に行った。 これらの活動は以下の点で有益であった。まず、NGOによるボートピープルの捜索救助活動をめぐる論点が明らかになった。第二に、NGOによる捜索救助活動に関する事実的また時系列的な情報を入手することができた。第三に、現地コミュニティでの難民の受入態勢、姿勢を学ぶことができた。次年度はこれらの知見を活かし研究をさらに進める予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成29年度は、第二子の妊娠・出産が重なったため、体に負担の大きい研究活動(現地調査や国際学会参加など)が制限され、また年度後半(10月から翌年3月)に産休・育休を取得したため、研究は全体としてやや遅れてしまった。 ただし、同年度中はイタリア・シチリア島での現地調査や専門家との意見交換を通じて、必要な情報・資料を収集し、専門家とのネットワーク構築を図ることができた。さらに、地中海南部におけるNGOの活動状況とそれに対する様々なアクターの認識を理解するなど、いくつかの点で進展がみられた。 なお、現在までに明らかになった点として、NGOによる捜索救助活動は、欧州難民危機を通して急速に普及していること、政府当局側はこのような傾向に否定的である一方で、NGOが有する資源の活用や活動の正当性などの面から公式的には容認・黙認していること、他方、NGO側は人道支援や政治的中立性という理念に捜索救助活動が必ずしも合致せずジレンマを抱えていることなどがある。 なお、もともとの計画では、初年度中にマルタ・バレッタおよびスイス・ジュネーブで現地調査を実施する予定であった。だが、マルタについては平成28年度中(平成29年2月)に同国訪問の機会があり、その際にMOASを訪問、職員に聴き取り調査を行う機会があったため再度訪問の必要はないと判断し、見送った。スイス訪問については、主な調査対象である国境なき医師団と日程調整がつかず見送らざるをえなかった。スイス訪問については、次年度以降に行う予定である。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究では、以下の点に焦点をおいて活動する。 第一に、これまでに収集した文献や聴き取り調査の分析を進める。それによって得られた知見を基に執筆を進め、学会で報告する。すでに、平成30年11月に開催される日本国際政治学会年次大会において報告することが決まっている(部会「保護する実践と統治の現実; コミュニティー・都市・自治体」において『EU国境管理ガバナンスにおけるNGOの役割-地中海での捜索救難活動を事例として』という題目で報告予定)。 第二に、あらたな知見を得るために、現地調査を行う。現段階では、年度後半にスイス・ジュネーブでの現地調査を計画している。ここでは、あらためて平成29年度中に訪問できなかった国境なき医師団を訪れ聴き取り調査を行うとともに、国連難民高等弁務官事務所や国際移民機関など移民・難民支援の分野で主要な国際機関や人道支援を行うNGOを訪れ、EU国境管理政策におけるNGOの位置づけに関する認識などについて理解を深めたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
第二子を妊娠したために体に負担が大きい海外での現地調査や国際学会への参加をあきらめざるをえなかったこと、また年度後半(10月後半より翌年3月まで)に出産・育児に伴う休暇を取り研究活動を行えなったことが、次年度使用額が生じた理由である。
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