研究課題/領域番号 |
17K13690
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研究機関 | 国際教養大学 |
研究代表者 |
堀井 里子 国際教養大学, 国際教養学部, 助教 (30725859)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | EU / 地中海 / 国境管理 / NGO / 国境なき医師団 / MOAS / 難民危機 |
研究実績の概要 |
本研究は、国境なき医師団とMOASというという二つのNGOによる地中海上での移民・難民の捜索救助活動を研究対象として、NGOとEU・加盟国当局との関係性を明らかにすることを目指している。平成30年度は本研究の2年目にあたる。当初は現地調査を計画していたが長期出張が困難となったため、前年までに収集していたインタビュー調査によるデータや継続して収集している一次・二次資料などを用いて分析・執筆を行った。その過程で、NGOと当局は緊張関係にあり、パートナーとしての協力体制を構築するには至っておらずむしろ活動継続を断念せざるを得ない状況にあることが分った。その背景にはパワーの明らかな非対称性があり、活動の継続性、制度化には困難がつきまとっていることも論じた。 こうした研究成果は、国内外の研究会で報告された。まず、オーストラリア・ブリスベンで開催された世界政治学会において近年の国境管理をめぐるEUの制度的組織的環境について報告を行った。その際には、本研究の主題を論じる上で重要な研究者と意見交換を行った。また、ディスカッサントも務め最新の研究に触れ国内外の研究者とのネットワークを広げた。次に、さいたま市で開催された日本国際政治学会研究大会において本研究の主軸となる部分に関する研究報告を行った。本報告内容は、学会雑誌『国際政治』第196号(2019年3月)において、「EU国境管理ガバナンスにおけるNGOの役割――地中海での捜索救難活動を事例として――」と題した論文として発表された。また、神戸大学で開催された神戸セミナーにおいても口頭報告を行い、貴重なフィードバックを得た。 最終年度となる2019年度においては、本年度にできなかった現地調査に努めるとともに、データの分析および執筆も精力的に行い主題の包括的な理解を目指す所存である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
家庭の事情などにより長期フィールドワークを行うことがかなわず、また研究協力者も家族の急病などにより出張がキャンセルとなったため、聴き取りを通した一次資料の収集に困難が生じた。しかし、前年度までに蓄積した資料・情報をもとに分析・執筆および国内外での研究発表作業に専念し、これらの点においては大きな進展がみられた。
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今後の研究の推進方策 |
2019年度は研究期間の最終年度にあたる。本年度は、以下の2点を解明する予定である。まず、海上での捜索救助活動を制限する装置としての法制度(例えば、「不法入国の支援・扇動」活動を違法として罰するイタリアのケースなど)の発展状況をEUレベル・加盟国レベルでまとめ、それぞれの相互作用と方向性を理解する。同次に、NGOのEU・国境管理政策の形成過程への参加についてEU統合の歴史と共に理解する。そのために、ベルギーおよび地中海周辺領域を訪問し、捜索救難活動に関わる政策関係者およびNGO職員に聴き取り調査を行う。また、学会などでの研究報告を行うとともに、新聞紙面などでの発表を通して得られた知見を広め社会に還元したい。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額が生じた理由は主に以下の2点である。第一に、当初予定していた長期の海外フィールドワークが家庭の事情により実施困難となった。既に集めていたデータを基に分析・執筆などに時間を割き、国内外の主要な学会で研究発表を行うことができたが、フィールドワークのために確保していた分を使用するには至らなかった。第二に、研究協力者も家族の急病により直前に海外出張をキャンセルせざるを得なくなった。次年度となる2019年度には、出張を行い必要なデータの更なる収集に努める所存である。
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