本研究は、テロ組織の首謀者を対象とした「繰り返し」の標的攻撃が、組織の活動に及ぼす影響を定量的に評価するとともに、組織ごとに異なる影響の理論的解明を行うことを目的とした。本目的の実行のため、既存のテロリズムデータを用い、(1)継続的な標的攻撃が組織の活動・存続に与える影響を資源動員・組織構造の観点から検討し仮説を構築、(2)「繰り返し」処置の代表的な推定方法である周辺構造モデルを用いた実証分析、を行う。
最終年度となる令和元年は,(1),(2)ともに全ての研究を終え,研究結果の国際学会での発表に加え,前年度「条件付き受理」となっていた国際誌にも掲載が決定した。研究結果に関しては,「繰り返し」標的攻撃の理論的説明に関して、初期の繰り返し攻撃は組織の士気を高める一方で、継続的な標的攻撃を行うことで政府による能力と意図を効果的にシグナリングし、結果的に組織の生存確率は低下することを議論し,仮説の実証がより深まった。本仮説について、研究計画通り周辺構造モデルを用いた統計的推定を行い、上記仮説について十分な支持を得た。研究結果は,安全保障分野で著名な学術誌の1つであるConflict Management and Peace Science誌へ掲載が決定し,既にオンラインでは閲覧できる状態となっている。また12月にはオーストラリア・メルボルンで開催されたAustralian Society for Quantitative Political Science Conference 2019でも研究結果の発表を行った。
以上のように,本研究は三年間の研究期間において当初予定していた全ての研究過程を終了した。研究結果については,国際学会での研究発表に加えて,国際関係論における主要な国際誌に既に掲載されており,十分な成果を得たとともに,本研究に関する研究の蓄積にも貢献できたと考えている。
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