研究実績の概要 |
本年度の成果は、大きく3つある。1つは統一的行動モデルの精緻化を行った。もう1つは Aytek Erdil 氏との共同研究論文に対するコメント論文を Erdil, Kitahara, Kumano, and Okumura (2022) として投稿した。最後に、栗野盛光氏との共同論文 Quota adjustment process の精緻化を行った。 (1)これまでの分析結果とプレ実験により、学校選択問題では学生の行動が理論とは異なる結果を導くことを明らかにしていたが、新たに、学生は選択肢が非常に多い場合、ある種の行動を行うことが明らかになった。それは、選択肢の提出可能数が十分に多かったとしても学生はある程度の数までしか提出を行わないということである。理論的には、deferred acceptance algorithm を使う場合真実表明が頑健な戦略であるにもかかわらず、モデルの制約ではなく内生的に提出数を短くすることが観察された。この結果はこれまでの理論分析を改める契機になるかもしれない有益な結果である。 (2)Erdil and Kumano (2019) の結果に一部不十分な点が発見され、Erdil, Kitahara, Kumano, and Okumura (2022) として問題点を克服した結果をまとめた。本論文は Journal of Economic Theory に投稿し、現在条件付き採択されている。 (3)栗野盛光氏との共同研究において、新たな結果を求めることに成功した。特に、戦略的性質として quota adjustment process は strategy-resistance という性質を満たすことを明らかにした。本論文は現在国際ジャーナルへの投稿準備中である。
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