研究課題/領域番号 |
17K13698
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研究機関 | 横浜国立大学 |
研究代表者 |
佐野 隆司 横浜国立大学, 大学院国際社会科学研究院, 准教授 (50611208)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | ゲーム理論 / オークション / メカニズムデザイン |
研究実績の概要 |
本研究は、時間を通じて資源配分が行われる環境における望ましい取引メカニズムの分析と設計をゲーム理論の枠組みの下で考察するものである。特に売り手が取引期限の異なる多数の財を配分し、また潜在的な買い手が代替・補完などの多様な価値評価を持っているような現実的な環境において、買い手の私的情報を正しく引き出し、効率性や売り手収入などの観点から望ましい結果をもたらす取引メカニズムを設計しようとするものである。 本年度は、論文”A Dynamic Mechanism Design with Different Deadlines and Multi-unit Demands”を執筆し、国内外の研究会にて報告した。本論文は、売り手が取引期限の異なる2財を配分し、また買い手は2財のうちどちらか一方あるいは両方の財を需要しうるような補完財の可能性があるモデルを定式化した。そして、買い手の財に対する需要が正しく引き出されるための必要十分条件を特徴づけ、売り手収入の意味で最適な取引メカニズムを導出した。更に、導出された最適メカニズムと、現実にしばしば観察されるチケット販売メカニズムの類似点・相違点について論じた。本論文は現段階においては草稿段階であり、今後国際学会等での報告を経て成果を洗練させ、国際的に評価の高い学術雑誌への掲載を目指す予定である。 また、本研究と関連する別研究として、オークションが逐次的に繰り返される状況下における入札者の戦略的行動と、均衡における価格推移の性質に関する研究を村本顕理氏と進めている。入札者が共通の予算制約(流動性制約)に直面しているときの入札者の均衡入札行動を特徴づけ、均衡取引価格が徐々に下落することを示した。本研究の成果については、今後論文の執筆を進めていくところである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は「動学的メカニズムデザイン」と呼ばれる研究分野にあたる。当初の計画では平成29年度はいくつかの国際学会・国内学会に参加し、動学的メカニズムデザインに関する最新の研究動向について資料収集を行い、また本研究に関するアイディアを関連する研究者と議論する予定であったが、研究代表者の所属機関変更等に伴う研究スケジュールの変更のため、当初計画していた国際学会等に参加することができなかった。この点については、当初予期していなかった事象である。 しかしながら、平成29年度内に論文"A Dynamic Mechanism ~"の草稿を執筆し、売り手が複数の異質財を配分し、買い手は財に対して代替・補完といった多様な価値評価を有する複雑な環境における最適メカニズムを導出することに成功したことは、重要な成果であると考えており、平成30年度以降、おおむね当初の予定通りに進捗していくことが予期される。
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今後の研究の推進方策 |
平成29年度内に草稿を執筆した論文”A Dynamic Mechanism Design with Different Deadlines and Multi-unit Demands”を主要な国際学会をはじめ、国内外の学会・研究会で報告し、成果を洗練させる予定である。その際、動学的メカニズムデザインの最新の研究動向について資料収集するとともに、関連する研究分野の国内外の研究者との研究交流を積極的に行いたい。同時に、本論文の分析の拡張や、派生的なモデルの分析の可能性について検討を始める。 また、村本顕理氏との共同研究としてすすめている逐次オークションのゲーム理論分析について、論文執筆をすすめる。同時に、モデルの拡張や関連する問題への応用可能性について検討することとしたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初の計画では、平成29年度はいくつかの国際学会・国内学会に参加し、当該研究分野の最新の研究動向について資料収集を行い、また本研究に関するアイディアを関連する研究者と議論する予定であったが、研究代表者の所属機関変更等に伴うスケジュールの変更のため、当初計画していた国際学会等に参加することができなかった。本年度未使用額については、主として平成30年度以降、主要な国際学会・国内学会等に参加するための旅費として使用する計画である。
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