研究課題/領域番号 |
17K13701
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
舛田 武仁 大阪大学, 社会経済研究所, 講師 (80725060)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 経済実験 / 公共財 / 制度設計 / 高次リスク態度 / プロスペクト理論 / 戦略的曖昧さ / 被験者実験 / 異時点間リスク |
研究実績の概要 |
典型的な公共財供給の実験では戦略的相互依存は考慮されるものの、環境問題に代表されるように投資によって将来得られる便益自体が不確かである場合は見落とされがちである。自己予防問題とは、将来時点で損失を被るリスクを低める予防努力を現時点でとる問題である。その最適な予防努力の水準を決めるのが、プルーデンスと呼ばれる下方リスク回避度である。近年の先行研究により、損失リスクが遠い(近い)将来にあるとき、期待効用の意味でプルーデントな意思決定者はそうでない意思決定者よりも多め(少なめ)に予防努力をすることが知られている。ソウル国立大学の研究者との共同研究では、この理論予測を被験者実験で検証した。被験者のプルーデンスは極めて高く、同時にその予防努力は損失イベントのタイミングに依らず高プルーデンス条件下での期待効用モデルの予測よりも低かった。同論文では、この現象がプロスペクト理論によって統一的に説明できることを示した。New York Universityの研究者と議論を重ね、この結果を集団予防や次に述べる曖昧さ下の意思決定に展開することに取り組んでいる。 不確実性にはそもそも確率を置くことができない種類のもの、所謂曖昧さがある。曖昧な事象を対象とした大半の実験は、Ellsberg以来、壺に入れた玉の色に関する賭けに基づいている。例外として現実の株式指数や気温を対象としたいくつかの実験があるが、むしろ我々が現実に直面する圧倒的に多くの曖昧な事象は、人々の戦略的相互作用の結果である。そのような曖昧な事象を個人がどのように捉えるのか、その捉え方は壷の玉の色のように無機的・人工的な曖昧な事象に比較してどう違うのか、について経済実験を用いて明らかにしつつある。具体的には実験室内で戦略的な状況を作り出し、第3者である個人がその結果についてどのように捉えるかを観察した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
集団予防行動の実験実施を来年度に延期したため。
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今後の研究の推進方策 |
不確実性下の意思決定実験をオンライン実施等代替的方法をとる可能性も考慮しながら実施に向けて進めていく.
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウィルス感染拡大防止策の一環として被験者実験をキャンセルした。実験参加者・補助者への謝金として使う予定である。
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