研究課題/領域番号 |
17K13702
|
研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
安田 洋祐 大阪大学, 経済学研究科, 准教授 (70463966)
|
研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
|
キーワード | 格差 / 再配分 / パレート効率性 / 安定性 |
研究実績の概要 |
本研究の主目的は「経済メカニズムが分配に与える影響を評価できる理論的フレームワークの構築」および「競争市場に関するベンチマーク結果の導出」の二点である。 前者については、昨年度までに「Pareto Efficiency with No Side-Payment (= PENS)」という独自の厚生概念を導き、それを元にさらに分析を進めている。これは、売買を行う買い手と売り手の間での金銭授受は認める一方で、政府などの第三者が再配分を行うことができない、という制約を達成可能な資源配分に課した上で、パレート効率性を定義したものである。PENSは通常のパレート効率性よりも弱い概念で、(達成可能な)パレート効率的な配分は必ずPENS集合に含まれる、という関係性がある。 本年度は、後者について大きな進捗があった。今まで本研究は、競争市場を離れた分権的な市場で何が起こるかを分析するための、実証的あるいは事実解明的なフレームワークを欠いていた。申請者は、数理経済学やマッチング理論で用いられる中心的な概念である安定性を大幅に弱めた新たな概念を定義し、この欠けている穴を補うことに成功した。さらに、同質財市場においては、この弱い安定性を満たす配分がPENS配分と一致することを明らかにした。これにより、PENSが規範的のみならず、実証的にも意味のある概念であることが示された。 平成30年度は本研究に関する研究報告を、復旦大学で開催された国際学会であるChina Meeting of Econometric Society、および京都大学と大阪大学のセミナーで行った。また、そこで得られたコメントなどを反映させる形で草稿の改訂も行った。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究実績の概要で触れたように、新たな研究成果が順調に上がっている点、研究報告から得られたフィードバックを研究のさらなる改善に繋げられている点、研究が論文としてまとまりつつある点、の三点を考慮すると、おおむね順調に進展していると考えられる。
|
今後の研究の推進方策 |
平成30年度は、問題を分析する上での理論的/概念的フレームワークがさらに拡充され、29年度から質的に大きく飛躍するような新たな結果が得られた。申請段階での計画に基づき、平成31年度は、すでに得られている結果を論文の形でまとめ、一流学術誌への投稿を目指したい。
|