研究課題/領域番号 |
17K13705
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研究機関 | 明治学院大学 |
研究代表者 |
中村 友哉 明治学院大学, 経済学部, 准教授 (70706928)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 情報の価値 / ファースト・ムーバー・アドバンテージ |
研究実績の概要 |
本研究プロジェクトでは、公共情報がモデルの中で生じる状況における情報の社会的価値の分析を行なっている。2017年度は、この分析を行うために、Nakamura(2015)の再考察から始めた。その結果、Nakamura(2015)では扱っていなかった新たな論点を見つけることができて、次のことが分かった。
本研究プロジェクトで扱うモデルでは、需要の不確実性が存在して。その情報をリーダーとフォロワーが、それぞれ私的情報として獲得する。このとき、利用可能な情報に基づく期待生産量は、リーダーの私的情報の精度に関して、リーダーは単調増加に増加して、フォロワーは単調に減少することを示した。一方、リーダーとフォロワーの期待利潤は、非単調に変化することを示した。 さらに、リーダーが先に生産することで利益を得るパターンは、フォロワーの競争の程度によって、3つのパターンに分類できることがわかった。 一つ目のパターンは、フォロワー間の競争が緩やかな時である。このとき、リーダーは自分の私的情報の精度が十分に低いときのみフォロワーよりも利益を得る。二つ目は、フォロワー間の競争が中間的な時である。このとき、リーダーは自分の私的情報の精度が中間的なときのみフォロワーよりも利益を得る。つまり、私的情報の精度が十分に低い時と、十分に高い時は、フォロワーよりも利益を得ることができない。3つ目は、フォロワー間の競争が激しい時である。このとき、リーダーは、自分の私的情報がどのような水準であっても、フォロワーよりも利益を得ることができない。 以上の研究成果をまとめた論文は、2018年度末にSSRNのディスカッション・ペーパーとして公表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究プロジェクトは、おおむね順調に進展している。2018年度は、Nakamura(2015)の設定に、Vives(2011)の消費者の設定を導入した理論モデルの構築作業に取り組んだ。この過程でNakamura(2015)の再検証を行った結果、当初は想定していなかった新たな論点を発見することができた。その結果をディスカッション・ペーパーとしてまとめ、研究成果を発表することができた。2019年度初頭には、日本経済学会と国際査読誌への投稿が可能な状態である。 また、Nakamura(2015)の設定にVives(2011)の消費者の設定を導入した理論モデルの構築に関しても、並行して研究を進めている。このモデルは、当初の予想よりも、均衡の振る舞いが複雑になることが分かった。しかし、エージェントの情報精度を同質的な設定に簡単化することで、目的としていた本質を失わずに、分析を進めることができると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
2017年度に取り組んだ課題を進展させるとともに、当初計画していた情報獲得の内生化の課題に取り組む。2017年度末にディスカッション・ペーパーとして発表した研究は、日本経済学会へ投稿して、発表を行う。その後、フィードバックを反映させて国際査読誌に投稿する。また、2017年度に取り組んでいた課題は継続し、2018年度半ばを目処に分析を終える。その後、結果をまとめて、ディスカッション・ペーパーとして発表する。また、2018年度は、Nakamura(2015)の理論モデルの情報獲得を、内生化する研究もスタートさせる。2018年度末に分析を終えることを目標にして、課題に取り組む。
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次年度使用額が生じた理由 |
2017年度に海外研究発表での旅費を計画していたが、予定が変更になったため、2018年度に旅費を繰り越すことになった。また、数値解析に利用するためにMathematicaの購入を予定していたが、2017年度の研究ではその段階まで至らなかったため、繰り越すことになった。
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