研究課題/領域番号 |
17K13711
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研究機関 | 九州産業大学 |
研究代表者 |
小沢 佳史 九州産業大学, 経済学部, 講師 (80772095)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | J. S. ミル / 平等 / 植民 / 財政 / 税制・社会制度改革 / 『代議制統治論』 / 草稿資料 / 対外政策 |
研究実績の概要 |
2020年度は、新型コロナウイルスによる影響が研究の面でも校務の面でも予想以上に大きかったため、本研究を当初の計画通りに遂行することは非常に困難であった。しかしそのような状況においても、計画を変更しながら、本研究を以下の3本の柱で可能な限り遂行した。 第1の柱は、経済学史・政治思想史関係図書の整備である。まず、新型コロナウイルスによる影響のため学内外の図書館の利用を見通せなくなった状況を踏まえて、重要文献のうちで手元には置いていなかったものを購入し、研究遂行の安定化・効率化を図った。さらに、研究会などの開催形態の変更(オンラインでの開催)を積極的に活用し、従来は物理的に参加できなかった研究会にもできる限り参加することで、情報収集や意見交換の機会を計画していた以上に確保し、これまで必ずしも十分にはフォローし切れていなかった文献を広範に網羅した。 第2の柱は、共著の原稿の修正・脱稿と公刊である。この論文では、実際の税制や社会制度の変更をめぐってミルが、一部の人々が犠牲にならないような具体策――ミルの理想像とは異なる次善の策――も提示していたということが鮮明にされた。加えて、経済的な平等をめぐるミルの短期的・長期的な理想像が詳細に描き出され、貧困を撲滅するための植民政策がその中でどのように位置付けられていたのかも明らかにされた。 第3の柱は、ミルの『代議制統治論』の草稿資料の分析と、それに基づく学会報告である。世界で初めて翻刻・公刊されている『代議制統治論』草稿資料について、2020年3月から12月にかけて公刊された草稿資料と第1版の該当箇所との異同を記した資料を作成し、その成果の一部(『代議制統治論』第16~18章の対外政策論)について学会報告を行った。この報告の概要は、『経済学史学会ニュース』第57号(2021年2月)のpp. 25~26に掲載されている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
一方で、新型コロナウイルスによる研究の面および校務の面での甚大な影響のため、本研究を当初の計画通りに遂行することは非常に困難であった。とりわけ、報告を検討していた国際学会が軒並み延期されたため、国際学会での報告を行うことができなかった。 他方で、そのような状況においても遂行できることを可能な限り見出し、論文執筆・資料分析・国内での学会報告といった点で、当初は計画されていなかったものも含めて一定の成果を着実に出すことはできたと考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
最優先の課題として挙げられるものは、『代議制統治論』草稿資料の分析などを踏まえて英語論文を執筆・完成させ、その公刊へ向けて作業を進めることである。2021年度も、授業期間中には新型コロナウイルスによる影響・混乱が予想されるため、前学期が終了してから後学期が開始されるまでの期間に、集中的かつ着実に本研究を遂行してゆく。 またこうした論文を改訂するための国際学会報告については、もし2021年度の前半までに何らかの学会で年度内開催の目処が立てば、その学会でできる限り報告を行う。他方でもし目処が立たなくても、国内の研究者と計画しているワークショップの機会を活用して、論文について綿密に議論し意見交換を行い、その成果を論文の改訂稿に反映させる予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額が生じた理由は、新型コロナウイルスによる研究の面および校務の面での甚大な影響があったことである。具体的には、まず研究の面で、報告を検討していた国際学会が軒並み延期されたため、国際学会での報告を行うことができなかった。また校務の面では、遠隔授業を準備することが急遽必要とされたため、本研究を計画通りに遂行する時間を十分には確保できなかった。 2021年度には、最優先の課題として英語論文を執筆・完成させ、この執筆作業の一環として国際学会での報告ないし国内ワークショップでの報告を行う予定である。次年度使用額については、主としてこれらにかかる英文校正費と旅費の支出を計画している。
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