本年度は以下の研究成果を得た。 1)昨年度の研究成果である、非対称カーネルを用いた境界バイアスのないノンパラメトリック密度推定量の3つのバイアス修正法を一般化した高次バイアス修正法について、昨年度実施した数値実験に加えて追加的な数値実験を実施して、バイアス修正前と修正後の2乗バイアス、分散を比較して、高次バイアス修正法により推定量の性能が改善されていることを確認した。さらに、バイアス修正の際の追加パラメータの最適な選択を考察した。 2)既存研究であるリフレクション法を用いて裾・境界バイアスを補正した直接型カーネル密度比推定量について、裾・境界バイアスを導出し、一致性はあるものの、裾・境界では内部のバイアスよりも収束が遅いことを示した。 3)昨年度までの研究成果である裾・境界バイアス問題のない直接型ベータカーネル密度比推定量について、実際のデータに適用した際のふるまいを確認するため、アメリカにあるイエローストーン国立公園のオールドフェイスフル間欠泉の2つの標本を用いて確率密度関数の比を推定した。推定結果から、これら2つのオールドフェイスフル間欠泉の標本が同じ確率分布から得られたであろうことを確認した。 4)裾・境界バイアス問題のない直接型ベータカーネル密度比推定量を応用して、確率密度関数の不連続性を仮説検定するため、検定する点で確率密度関数を分割してそれぞれを分母・分子として比の推定を考えることにより、仮説検定に用いる検定統計量を考案した。さらに、その検定統計量の漸近的性質(バイアス、分散、平均2乗誤差、漸近正規性)を導出した。また、検定の際に用いる平滑化パラメータの選択法の研究に着手した。
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