2018年度までに得られた研究成果の拡張として,2019年度にはおもに次の2点の研究計画を遂行した. 第1に,2018年度の論文投稿で得られた雑誌編集者と査読者からのコメントを参考にすることで,回帰不連続デザインにおける処置変数が測定誤差を含むときの因果効果パラメータの識別・推定方法に関する研究論文の改訂を進めた.特に,雑誌編集者・査読者から得られたコメントでは実証分析とモンテカルロ・シミュレーション実験に関する複数の改善点が指摘されていたため,2019年度には実証分析とモンテカルロ・シミュレーション実験の改訂に尽力した. 第2に,2018年度に国際学術雑誌Econometric Reviewsから掲載許可を得た論文にまとめた局所平均処置効果の識別・推定方法の関連研究として,内生的な処置変数が測定誤差を含むときの因果推論モデルにおける分布処置効果・分位点処置効果・限界介入効果などの因果効果パラメータの識別・推定方法の開発に着手した.内生的な処置変数が測定誤差を含まない状況においても,これらの因果効果パラメータの識別・推定方法は平均処置効果の識別・推定方法とは異なることがよく知られている.そのため,測定誤差が存在する状況においても,これらの因果効果パラメータを識別・推定するための新しい分析方法を開発することが重要となる.2019年度には,各因果効果パラメータの識別・推定を考えるための土台となる計量経済モデルを構築するとともに,各因果効果パラメータを点識別できるための十分条件の導出を試みた.
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