操作変数モデルの誤差項には不均一分散やクラスター構造が存在し、なおかつ沢山の操作変数が存在する場合、漸近理論的な妥当性を持つブートストラップ法の開発を行いました。このブートストラップ法による信頼集合の開発については、いつくかの解決すべき問題がありました。まず、通常使われているWald Typeブートストラップ信頼集合の有限標本性質は非常に悪いため、全ての帰無仮説に対してブートストラップ検定を行い、棄却できない場合に、その仮説に対応する値を信頼集合に含めるという形でブートストラップ信頼集合を構築しました。また、既存の理論研究では操作変数モデルの誤差項には比較的に簡単な構造が仮定されているため、これらの研究の議論を拡張する必要もありました。この問題を解決するために、Newey and Windmeijer (2009) の中心極限定理を参考にしながら、新たに不均一分散やクラスター構造が存在する場合でも通用できるブートストラップ漸近理論を導出しました。この新しい漸近理論を用いたブートストラップ法に関する理論分析を行いました。実装的には、最も単純な場合でもブートストラップ法には計算量の問題があることがわかりました。そのため、ブートストラップ法の計算時間が実行可能な範囲に収まる新しい手法を考案しました。また、提案された新しいブートストラップ法のパフォーマンスを検証するために、沢山のモンテカルロ実験を行いました。異なる操作変数の強度、不均一分散とクラスター構造を生成することによって、提案された新しいブートストラップ法による信頼集合は優れた有限標本性質を持つことが確認されました。
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