研究実績の概要 |
今年度は定常長期記憶系列において長期記憶パラメータdが変化した時の変化点推定について考えている。Yamaguchi(2011)では、変化点比率の推定量が一致性をもつことを示し、変化点推定量の漸近分布を導出した。それをもとに信頼領域を求めることができる。線型モデルで構造変化を考えたBai(1997)の方法をなぞったものである。この方法は変化の幅がある程度の大きさであることを仮定している。それに対して変化幅が小さい場合には信頼領域のカバレッジ率が悪いことが知られている。Elliott and Muller(2007), Yamamoto(2018), Kurozumi and Yamamoto(2015)は、帰無仮説はある固定の時点で変化するとおいて、それが棄却されなければその点は変化点の信頼領域に入る、というのを想定される各点で繰り返し行うことにより、変化点の信頼領域をつくる方法を提案し実際にうまくいくことを示している。 長期記憶パラメータd は少し変化しただけでも平均の信頼区間や長期的な予測に大きな影響を与えるのでモデリングする際には考慮することが重要である。Elliott and Muller(2007)などの方法を用いれば変化幅が比較的小さい場合でもうまくいくのではないかと考えた。有限標本でのパフォーマンスを調べるためにシミュレーションしている途中である。理論的にうまくいくことを示すのは少し難しいかもしれないと考えているところである。
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