研究課題/領域番号 |
17K13723
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研究機関 | 横浜国立大学 |
研究代表者 |
鶴岡 昌徳 横浜国立大学, 大学院国際社会科学研究院, 准教授 (30756078)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 繰り返しの関係 / 公共工事の入札 / 国債の入札 |
研究実績の概要 |
申請者の研究は公共工事の入札に関する研究と国債の入札に関する研究の2つから構成されている。 公共工事の入札に関する論文については、特定の企業が繰り返し入札に参加する談合が発生しやすい入札方式から競争的な入札方式へ移行したことの効果を、価格と品質の両方の観点から分析した。分析結果としては、競争を促進する政策の効果は地域ごとに異なっているということが分かった。技官の仕事量が多く調達の運営が非効率な地域では、入札参加者に対する事前の審査が甘く、競争を促進する政策は落札価格の下落をもたらすが、それと同時に構造物の耐久性や工事期間といった工事の品質指標の低下をもたらした。一方で、技官の仕事量がそれ程多くなく調達の運営が効率的な地域では、入札参加者に対する事前の審査が厳しく、競争を促進する政策は落札価格の下落に加えて品質を改善する効果があることがわかった。 この論文を大阪大学のランチタイムワークショップにて報告をし、様々なフィードバックをいただいた。この論文については、現在改訂中である。今後、論文の完成後、英文校閲者に英文を直してもらったうえで、国際学術雑誌に投稿する。 国債の入札に関する論文については、金融機関同士の競争がない国債の発行方式から入札へ移行したことの効果を分析し、国債の市場では入札は競争を通じて高い政府収入を達成しているかを検証した。さらに、国債の入札市場では、競争の効果は短期的であり、長期的には入札による競争の効果は低減することが分かった。 国債の論文はかなりの程度完成に近づいていて、現在、英文校閲者に英文を修正してもらっている。それが終了した後に国際学術雑誌に投稿する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初の予想よりも多くの学内の仕事を引き受けることとなったため、論文の作成が遅れてしまったことと英文校閲に要する時間が予想よりもかかった。さらに、当初は通ると予想していた国際学会に論文審査が通らなかったため、再度それに挑戦する必要がある。
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今後の研究の推進方策 |
公共工事における繰り返される入札の効果の実証分析に関する論文については、論文の完成し英文校閲が終了した後に、国際学術雑誌に投稿する。国債の入札に関する論文も同様に、国際学術雑誌に投稿する。 上の研究に加えて、スコアリングオークション(以下、スコア入札)と言われる価格と品質の両面から競争する入札方式に関する実証研究を行う。スコア入札に関する研究では、「スコア入札が価格のみで入札者が競争する入札方式(価格競争入札)に比べてどのくらい政府の便益を大きくするのかを測ること」及び「工事タイプごとにスコア入札導入の効果が異なっているか否かを測ること」を公共工事の調達データを使って行う。これらの問いに答えるために、品質が重要でかつ技術的難易度の高い工事にスコア入札が使われる場合と技術的難易度の低い工事にスコア入札が使われる場合のそれぞれにおけるスコア入札の効果を、価格と構造物の耐久性などの品質の両面から分析する。これらの分析を行うために、プログラム評価の手法と構造推定といわれる計量分析の方法を使う。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初の予想よりも多くの学内の仕事を引き受けることとなったため、論文の作成が遅れてしまったことと英文校閲に要する時間が予想よりもかかった。さらに、当初は通ると予想していた国際学会に論文審査が通らなかった。 次年度の使用計画としては、英文校閲と国際学術雑誌への投稿のために研究費を使用する。
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