本研究では、公共工事並びに国債の入札は競争を通じて政府に高い便益をもたらしているか否かを実証分析した。 公共工事の支出額は政府予算に占める割合が多いので、公共工事の調達の入札が競争的で調達価格が下がることは政府支出削減という意味で重要といえる。公共工事の調達では、価格の低下が重要な一方で、工事が遅延せずに終了するかや完成した構造物の耐久性といった工事の品質も重要といえる。工事の品質を維持するために指名競争入札と言われる入札方式が使われるが、この入札方式は特定の企業が繰り返し参加するので談合が発生しやすい。公共工事の入札の研究では、指名競争入札から一般競争入札といわれる競争的な入札方式へ移行したことの効果を、総合評価方式といわれる価格と品質の両面で競争がなされる入札方式の下で、価格と品質(工事期間等)の観点から分析した。分析結果は、一般競争入札は指名競争入札に比べて、価格と工事期間の両面を改善する効果があった。その一方で、構造物の耐久性の指標については変化がなかった。この論文については、今後、公正取引委員会などで報告する予定である。 国債の入札でも、少数の大手企業が繰り返し入札に参加し落札することから競争的かどうかが懸念される。したがって、企業同士の競争がない国債の発行方式(交渉)から入札へ移行したことの効果を分析し、国債の市場で入札は競争を通じて高い政府収入をもたらしているかを検証した。分析結果は、入札は交渉に比べて価格の上昇をもたらし、政府と強い結びつきのない外資系企業による国債の大量購入をもたらした。それに対して、入札により、発行条件の決定までにかかる時間や発行の失敗(交渉の決裂や入札での需要が極端に少なくて国債が発行できなくなること)が発生しやすくなることは確認されなかった。この論文については、一部のデータの差し替えて分析をやり直し、最終段階のまとめ作業を行った。
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