研究課題/領域番号 |
17K13732
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
村尾 徹士 九州大学, 経済学研究院, 准教授 (00645004)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 経済活動の集積 / グローバル化 |
研究実績の概要 |
(具体的内容) (1)賃金決定メカニズムと集計経済格差の関係に関する研究を更に進展させた. (2)経済活動の集積/グローバル化(人の移動費用および財の輸送費用の低下)と感染症伝播に関する動学モデルに関する研究を進展させた. 本年度は特に(2)についての分析に注力したので以下で詳しく述べる.この研究の焦点は,「経済活動の集積/グローバル化と公衆衛生インフラ整備の相互作用」が有する影響の解明である.ただし,ここで「公衆衛生インフラ」として念頭に置いているのは,i) 医療機関や保健所など公衆衛生に資する物理的なインフラと,ii) ワクチンや治療薬など公衆衛生に資する知識資本からなる,より広い概念である.本研究の出発点は,「公衆衛生インフラストックの十分な蓄積は,経済活動の集積/グローバル化の恩恵を享受するための基礎的条件である」という観点である.この観点に基づき,経済活動の集積とグローバル化の程度が現状の公衆衛生インフラストックの蓄積水準から見て過大となってはいないかを検討する. (意義・重要性) 「経済活動の集積/グローバル化がイノベーションや知識波及を促進する」ことは実証的にも広く認められている.一方で,今般のCovid-19パンデミックの重要な教訓のひとつは,感染症伝播に内在する外部効果ゆえ,経済活動の集積/グローバル化の恩恵を真に享受するには「公衆衛生に資する物理インフラや知識資本への投資も平時からバランスよく行っておく必要がある」という点だと考える.最適な公衆衛生インフラの水準を明らかにすることには,従って,一定の意味があると考える.「人類発展の歴史は感染症との戦いの歴史であった」ことは広く認識されているが,経済活動の集積/グローバリゼーションという経済発展の一要因の最適性を,公衆衛生インフラの整備という観点から再評価する点が新しいと考える.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
「経済活動の集積・グローバル化と公衆衛生インフラ整備の相互作用」に関する研究について,順調な進展が見られたため.
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今後の研究の推進方策 |
(1)動学的一般均衡モデルにおける賃金決定メカニズムの導入に関する研究について,経済格差への影響に関するシミュレーションを行う. (2)空間動学モデルとSIRモデルの統合により,公衆衛生インフラ整備の影響を見るためのモデルを完成させる.
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次年度使用額が生じた理由 |
本研究課題で進めているシミュレーションモデルの規模が大きくなり,予定通りに研究を完了するためには科学技術計算に特化したGPU(演算のための装置)が搭載された高性能のワークステーションが必要になった.一方で,新型コロナによって半導体(GPU)価格が高騰し,ワークステーション価格もかなり値上がりしてしまったため,購入は翌年度に見送ることにした.またCovid-19の影響により学会等への参加が滞り,旅費の使い残しが発生した.次年度使用額については,次年度請求分の物品費(ワークステーション購入)と旅費(学会参加)に含めて使用する.
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