(研究の具体的内容) 以下では,「公衆衛生インフラストックの蓄積水準から見た経済集積・グローバル化の厚生評価」のプロジェクトについて概要を述べる.本プロジェクトでは,「公衆衛生インフラ」を,i) 医療機関や保健所など公衆衛生に資する物理的なインフラと,ii) ワクチンや治療薬など公衆衛生に資する知識資本と定義する.これら2つのタイプの公衆衛生インフラを,2つのモデルを構築して別個に分析した. (1)「物理インフラへの投資決定モデル」では,現実のデータと適合させるために「将来の感染症流行確率」に関する不注意をモデルに導入した. (2)「公衆衛生に関する動学的知識拡散モデル」では,累積ワクチン接種率の時系列データと適合させるために「ワクチン知識に関する社会学習」をモデルに導入した.本年度は分析に用いるためのワークステーションを購入できたため,両モデルについて暫定的な結果を得ることができた.今後はこれら2つのモデルを統合することによって,任意の時点での経済集積とグローバル化の過少・過大性の程度を,公衆衛生インフラストックの蓄積状況から評価するための枠組みを提供できると考えている. (意義・重要性) Covid-19の一応の収束とともに,リモートワークからの復帰や国際的な物流人流の再度の活発化が予想されている.しかし新たなウイルスによるパンデミックの脅威が無くなった訳ではないため,「公衆衛生に資する物理インフラへ及び知識資本への投資水準」という観点から経済活動の集積/グローバル化を評価するフレームワークの開発は,今後とも一定の意義を有していると考える.
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